ありふれた日常の中の神秘性に気づいた本

この「千代田人セレクション」カテゴリでは、区内の様々な分野で

活躍している“千代田人”におすすめの本を紹介していただきます。

初回となる今回は、千代田図書館コンシェルジュの押田が

 ★何度も読み返してしまう【バイブル本】

 ★人生の岐路での進路を決めた【きっかけ本】

の2冊を紹介します。(2回に分けてお届けします。)

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千代田図書館コンシェルジュ押田径子さんが

何度も読み返してしまう【バイブル本】

 

『影法師』より「もし」

著者 遠藤周作

出版社 新潮文庫(昭和49)

参考価格 440円

ISBN 4-10-112307-1

 

 


 

大学時代に出会い、年に一度は読み返しています。

恩師が一番好きな本が「もし」でした。

厳しいことで有名な先生でしたが、授業は、

専門のアメリカ文学の他、さまざまな本や先生ご自身の

体験にまつわる話がとても興味深く、朝一番の授業を

毎回楽しみにしていました。その先生が好きな本と知り、

早速読んでみました。ちょうどその頃、私自身が初めて

経験する大きな壁にぶつかっていた時でもありました。

 

作品の中で、「僕」によってモニックさんの人生が大きく

変わったように、自分が他人の人生を横切ることで、

相手の人生を大きく変えてしまうことがあります。

「もしあの時あの人と出会わなかったら・・」というように、

「もし」という偶然には、実は大きな意味があるのではないか

という作者の思いに強く共感しました。

さまざまな偶然の重なりの中に、今の自分が在ることに気づいた時、

自分に起きた出来事や出会った人々が

とても貴重に思えました。また、普段の何気ない生活が、

魅力的に感じるようにもなりました。

 

当時ぶつかっていた壁を今は乗り越えています。

壁の前でもがいていた時期に、「もし」が重なり、

さまざまな出会いがあり、

今の自分へつながる方向へ導かれたように思います。

図書館では、ほんの一瞬の挨拶や会話を繰り返しながら、

毎日たくさんの人に出会います。大げさかもしれませんが、

その一瞬が誰かにとっての「もし」につながるかもしれない

と考えると、心地よい緊張感が絶えません。

 

わずか16ページの物語ですが、ありふれた日常の中にある

神秘的な出会いに気づくことができるはずです。

どんな人にもどんな状況にもおすすめします。

 

★紹介者プロフィール★

所属 千代田図書館

担当 コンシェルジュ

名前 押田径子

図書館コンシェルジュ歴4年目。

図書館内や神保町の「本と街の

案内所」では本探しのお手伝い

や街案内の全般を行い、イベン

ト等では司会も担当する。

 

 

Posted at:10:00