「飯島書店」で数千年前にタイムスリップ!

千代田図書館9Fには、神保町の様々な古書店が

各店自慢の貴重資料を展示する、月替りの出張古書店

コーナー「としょかんのこしょてん」があります。 

7月29日(木)まではvol.38「日中印譜の世界」と題して、

一級品の印譜(※)の数々を展示・販売(仲介)しています。 

 

※印譜(インプ)とは

印章(印、判子)を紙に押して、本の体裁にしたもの。

▲黒枠の中に、さまざまな印章が押されています。

 

今回の展示を担当された「飯島書店」は、千代田図書館から

歩いて約10分、靖国通り沿いのビル2階にあります。

1階に「ブンケン・ロック・サイド」が入っている煉瓦の建物です。

 

  

▲[右]階段を1歩上ると「いらっしゃいませ」の放送が流れ、

ちょっとびっくりします。

 

今日は、四代目店主・飯島徳光さん、ご子息で五代目の崇光さん、

そして書道や篆刻の創作活動をされている、店員の小長谷さんに

話を伺いました。

 

 

▲[右]時計がかかっている壁の向こうに、掛け軸類と作業場があります。

 

創業当時は、すずらん通り側で洋書を扱っていたのが、戦後、

洋書が入手困難となり、書道や東洋美術関連書を取り扱うように

なったそうです。立看板に「和漢」とあるように、日本・中国、

両方の書道関連書があります。

中国やアメリカからのお客さんも大変多いようで、

仕入れの市のみならず、店内での取引額も、聞いてびっくり!!

ここは“書”の世界では名高い専門店。

博物館に収蔵されたこともあるそうです。

 

とはいえ書の世界は、特別な人のための高尚な趣味、

ということではありません。

時代や作家によって異なる、文字の形、配置や構成、

墨や朱の色、風合いなどをじっくり鑑賞して味わうもよし、

実際に模写・模刻に挑戦してみるもよし。

テキスト類も、たくさん手頃な価格でありますよ。 

 

≪お手本として定番の商品≫ 

書跡名品叢刊(ショセキメイヒンソウカン)1~208

二玄社刊 各¥1,200-(絶版)

「宋(時代) 黄山谷(作者)

李白憶舊遊詩卷(書名)」

というタイトルになっています。

 

 

 

 ▲[上]まずはその書の全体像を見る[下左]原寸で文字を見る[下右]解説付き

 

≪5代目・崇光さんのおすすめ≫ 

原色法帖選 1~45

二玄社刊(一部絶版)

原寸・原色で、装丁も大変美しいです。

じゃばら折りの経本式になっています。

(=「折手本」)

解説と読み下し文も付録。 

 

   

  

 ▲文字が欠けた部分に、たくさん押印されています。これは歴代の所有者の印。

 

≪初心者・独習者に≫

書道技法講座

二玄社刊

筆の運び方などが写真で解説されて

いて、初心者でも見やすく、

わかりやすいです。  

 

 

 

 

 

数千年の時を重ねてきた書がかもし出す悠久の世界。 

店内で感じたのは、心の静けさと潤いでした。

慌しい生活から、ふと流れの異なる空間に居合わせた、

という感じがして、外の暑さもすっかり忘れていました。

 

▲掛け軸「楊大眼造像記」¥60,000- 書が彫られたのは千年前。

 

最後に徳光さんが語ってくださったのは、

よそにはないものを扱っているという専門店としての面白さ。

仕入れたものをそのまま出すのではなく、糸綴じや糊付けなど、

必要な場合は、自ら修理をして店頭に出すこと。それを買って

下さる方がいること、そういうところに面白みがあるそうです。 

 

文化的背景や歴史など、持てる知識を総動員して

仕入れ、値をつける。

例えば10円で仕入れたものが100万円で出たり、

逆に1000万円で仕入れたものが、実はそんなに価値がなかったり。

そうした生の経験をつみながら、舞い上がらずに、

シビアにものを見る目を養っていくのだそうです。 

改めて古書店という商売の特殊さ、おもしろさ、奥深さを感じました。

 

…なんとこの日、店員の小長谷さんが「篆刻」を披露してくださいました! 

この様子は次回お届けします。 

 

★飯島書店

住所:神田神保町2-3 電話:03-3261-1578

営業:10時~18時(日・祝11時~17時) 休み:火曜

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Posted at:13:30