1冊の本から、遺跡を訪ねての夢

千代田区内のさまざまな分野で活躍している“千代田人”が

おすすめの本を紹介する「千代田人セレクション」をお届けします。

今回は、以前「まちの読書活動」の取材でお世話になった

お茶の水小学校の小林校長先生が【きっかけ本】を教えて下さいました。

とても心温まる、まるで1冊の本になるような、おはなしです。

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~1冊の本から、遺跡を訪ねての夢~

 『児童百科事典』全24巻 平凡社(1951)

  

私は、小さい頃から世界の遺跡に興味・関心がありました。

それは、今の世界を築いた地球上の先人の文化・文明の証

だからです。そのきっかけを作ってくれたのは、小学校時代

に父が買ってくれた平凡社の『児童百科事典』でした。

さまざまな事柄が掲載されている百科事典に、私は夢中になって

第1巻から最後の第24巻まで何度も読み直しました。

 

その中で、特に興味・関心をもったことは、

第1巻に記載されていた「イースター島」でした。

南太平洋の真ん中にある小さな島「イースター島」にある

「モアイ」の石像、誰がいつ、何の目的で作ったのか、

世界の七不思議のひとつであるこの石像を、ぜひ自分の目で

見たいと思う気持ちが強くなりました。

 

ようやく教師になって27歳のとき、

念願の「イースター島」に行く旅に出ました。

その頃は、飛行機の直行便がなく、アメリカのロサンゼルス・

ペルーのリマ・チリのサンチャゴを経由し、

3日を経て、ようやく南海の孤島に到着しました。

すぐに巨大なモアイの石像を見たときは、

長年の夢が実現したことに、感動しました。

 

その後、遺跡を訪ねての旅を数回しました。

今、世界遺産で有名になったペルーのマチュピチュ、

ナスカの地上絵、パキスタンのモヘンジョダロ、

アフガニスタンのバーミアンの遺跡等です。

 

今は、海外へはなかなか行けませんが、

国内の遺跡や歴史的な史跡を訪れています。

特に、秋に開催される奈良の「正倉院展」には

時々行っています。

 

このようなきっかけを作ってくれたのは、

幼いときに父の買ってくれた百科事典でした。

 

さて、私の夢は私だけでなく、

自分の教えた子どもにも伝わりました。

麹町小学校での担任をしている時に、

イースター島の話を子どもたちにしました。

 

その話を聞いていた山本君は、モアイに興味をもち、

大学時代にアルバイトでお金を貯めて、

イースター島に行ってきました。そのお土産に、

モアイの石像のミニチュアを私に、届けてくれました。

今、私の傍に二体のモアイのミニチュアが置かれています。

 

[左]山本君からのお土産 

[右]小林校長先生がお持ちのモアイ像

 

この二体のモアイは、私の宝物です。

自分の夢を、子どもが受け継いでくれた喜びを感じます。

教育に関わる人間として、このような心のリレーを、

これからも大切にしていきたいと思います。

  

★紹介者プロフィール★  

所属 お茶の水小学校 校長

名前 小林勇司 

教師生活37年目。大島も含む、都内各地

の小学校で勤務。千代田区立昌平小学校、

千代田小学校の教頭を経て、お茶の水小

学校長に就任2年目。学生時代に図書館

でのアルバイト経験もあるという読書家。

Posted at:18:30