コンシェルジュ通信Vol.22:春の東御苑で万葉集に詠まれた花を探す

風は冷たいものの、日差しに暖かさを感じられるようになりました。

千代田図書館から徒歩約15分の距離にある皇居東御苑にある梅林坂では

遅咲きの梅も咲きはじめたようです。

「万葉集」に詠まれている草花の中で、

萩の次に多いと聞き、「万葉集」に詠まれた草花を探しに

早春の東御苑へ出かけることにしました。

 

どんな春の草花が万葉集に登場するのか、

まず出かける前に調べたのは、こちらの一冊。

 

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『万葉の花100選 古歌でたどる花の履歴書』

大貫 茂 文/写真

淡交社

 

万葉集に登場する草花を春夏秋冬の季節ごとに掲載しており、

代表的な歌とともに写真付きで解説しています。

 

東御苑にある草花の場所と開花状況は

宮内庁ホームページ内の皇居東御苑花だよりで確認して

さぁ出発。

(皇居東御苑花だよりはコチラ

 

千代田図書館前の清水濠を進み、

北桔橋門(きたはねばしもん)から東御苑に入りました。

天守台跡を眺めつつ左側へ進むと梅林坂があります。

 

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梅林坂は、江戸城を築城した太田道灌(おおたどうかん)が

文明10年(1478年)に天神社をおまつりするために

数百株の梅を植えたことから梅林坂という名がついたとか。

現在では約50本の梅の木が植えられているそうですが、

訪れたこの日も、紅白の梅が暖かい日差しに照らされていました。

 

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万葉集にはの歌が119首も登場するそうです。

『万葉の花100選 古歌でたどる花の履歴書』では

梅の花を詠んだこちらの歌をとりあげていました。

 

 妹(いも)が家に 咲きたる花の 梅の花

 実にし成りなば かもかくもせむ 

                 藤原八束(やつか)

 

この歌は結婚について詠んでいる歌で、

「あなたの家に咲いた梅の花が実になったときに、

(結婚するかどうか)どのようにでも決めましょう」

という意味のようです。

梅の花が実になるのはいつごろかしら、

などと思いを馳せながら、

次の草花を探して梅林坂から本丸休憩所に向かいました。

 

本丸休憩所の近くにある緑の泉と呼ばれる場所で見つけたのはこちら。

 

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現代名でアセビという種類。

古くは「あしび」と呼ばれていた花で、白い花をつけるのだとか。

ここでは、園芸用として多く栽培されているという

赤い花のアケボノアセビを見つけました。

万葉集には10首が登場するそうです。

 

つづいて本丸休憩所から、大番所の前を通って大手休憩所を目指します。

 

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大手休憩所前ではミツマタが咲き始めたばかりでした。

枝が三つ叉(また)に分かれているのが名前の由来だそう。

まだ白っぽく見えますが、枝の先に黄色の花が開きます。

 

万葉集の中に登場する「さきくさ」という草花は、

このミツマタであるとする説が現在では有力とのこと。

登場するのがわずか2首のみというのも、

どの植物か特定するのが困難な理由のようです。

 

ここでは散策していた方々から

「あら、ミツマタが咲きはじめたわね」

という声も聞かれました。

黄色の花が満開になった頃、また訪れるのが楽しみです。

 

最後に、ミツマタのある大手休憩所からほど近い

三の丸尚蔵館前のを眺めながら、

大手門を抜けて早春の東御苑を後にしました。

 

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東御苑で見つけたアセビやミツマタが

万葉集でどんな風に詠まれているかは、

ぜひ、今回ご紹介した本でご覧ください。

万葉集にまつわる草花の本を多く刊行している著者が、

分かりやすく解説しています。

 

また、今回ご紹介した一冊の他にも、

万葉集にまつわる本は多く出版されています。

今も身近にある草花が、

昔の人にはどのように映ったのかを知ると

今見えている風景も趣が違って見えてくるかもしれません。

ぜひ、図書館の本をそのきっかけにしてみてください!

Posted at:11:00

コンシェルジュ通信Vol.18:小さな出版社について学ぶ2冊

最近は“出版不況”という言葉をよく目にします。

「本が売れない」「書店の数が減っている」など、

出版社にとって苦しい状況が報道される一方で、

1人~数人で本の企画、編集、営業までこなす、

小さな出版社が注目されているようです。

 

 

9月に発売されたばかりの『小さな出版社のつくり方』は、

11社の小さな出版社にライターの永江朗さんがお話をきいた、

インタビュー集。

 

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『小さな出版社のつくり方』

永江 朗/著

猿江商會

 

収録されている11社の出版社は、

テレビ局の記者さんが転身して起業した会社もあれば、

大きな出版社を退職した方が起業した会社もあり、

出版エージェントをしながら本も作っている会社や、

書店も経営しながら出版も行う会社など、

起業の経緯も営業の形態もさまざま。

 

前職を退職した理由や、創業資金の具体的な数字、

本の流通を握る取次会社に取引をお願いする際の苦心など、

かなり踏み込んだ内容まで赤裸々に書かれています。

経営者のみなさんの言葉がとてもユニークで、

特に羽鳥書店の羽鳥和芳さんの

「出版界ではみなさん出版不況だといいますが、

 私は不況だと思っていません。

 いまを出版不況だというなら、

 そもそも出版好況なんて時期はあったのだろうか」

という言葉にはガツンと心を揺さぶられました。

 

 

2冊目にご紹介する『あしたから出版社』は、

夏葉社という出版社を経営している島田潤一郎さんによる1冊。

 

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『あしたから出版社』

島田 潤一郎/著

晶文社

 

「就職しないで生きるには」というシリーズの中の1冊で、

従業員が自分1人だけの小さな出版社を起業した経緯を中心に、

島田さんのこれまでの半生が綴られています。

起業のきっかけは50社の就職試験に落ちたことと

仲の良い従兄が事故で突然亡くなったこと。

「叔父と叔母のために本を作りたい」と一念発起したのは

2008年、31歳の時の出来事でした。

 

島田さんは出版社での仕事の経験はありましたが、

編集の経験は無し。

プルーストの『失われた時を求めて』は読破したけれど、

仕事はどれも長続きしない20代を過ごしてきたそうです。

起業してから島田さんがどんな苦労と喜びを味わったのか、

正直すぎる文章に笑いと涙がこぼれました。

 

 

この2冊を読み進めていくうちに

図書館で本に囲まれて勤務していても、

本がどのように作られて手元に届いているのか、

出版社はどのように経営がされているのか、

知らないことばかりだったことに気付かされました。

 

『小さな出版社のつくり方』のあとがきを

インタビューアーの永江朗さんは

「取材した音声データを聞き返しながら、

 本の未来についてあれこれ考えました。

 けっこう明るい気持ちになって、

 この長いあとがきを書くことができました」

という言葉で結んでいますが、

この2冊を読むと、本当に明るい気持ちになります。

 

 

今回ご紹介した2冊は千代田図書館の「出版にまつわる本棚」

に所蔵されていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。

「出版にまつわる本棚」の資料は館内閲覧のみとなります。

ご自宅でゆっくりと読みたいという方は、

近隣書店での在庫の確認や書店への取り置きも依頼する

「書籍購入サポートサービス」をご利用いただけますので、

図書館コンシェルジュまでお気軽にお声掛けください。

Posted at:10:30

コンシェルジュ通信Vol.10:春のおさんぽが楽しみになる本

千代田区の絶好のおさんぽスポットのひとつ、皇居東御苑

苑内にはたくさんの植物が育ち、四季折々の美しい自然を感じられます。

このごろは、コンシェルジュブースにも利用者の方より

「早咲きのサクラが咲き始めたよ」

と、春の訪れが感じられる情報が寄せられます。

どんな花が咲いているのでしょうか?

 

千代田図書館から歩くこと約15分。

ウメの名所「梅林坂」では、

色やかたちがさまざまな種類のウメの花が満開です。

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苑内にあるサクラのうち半数以上が植えられている「桜の島」には、

早くも満開の木があります。

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こちらは(上写真)ツバキカンザクラ。

 

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こちらは(上写真)カワヅザクラ。

たくさんの入苑者が花をつけた木々の周りに集まり、

笑顔で見上げています。

 

同じ「桜の島」に植えられているカンヒザクラは、つぼみがふくらんできています。

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これからどんな花を咲かせてくれるのか、待ち遠しいですね。

 

今回は、千代田区立図書館所蔵の本の中から、

春のおさんぽが楽しみになる本を3冊ご紹介します。

 

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『皇居東御苑の草木帖』

木下栄三/著・画

技術評論社

(千代田図書館では館内閲覧専用。

 四番町図書館、日比谷図書文化館、昌平まちかど図書館では貸出可)

 

東御苑で見られる約860~870種類草木などが

繊細なイラストと細かなメモによって紹介されています。

著者は、建築家であり画家。江戸文化歴史検定1級も保持しています。

本書の「はじめに」で、「植物の専門家ではありません」と断っていますが、

ひとつひとつを発見して、調べて、詳細にスケッチしたという情熱に圧倒されます。

サクラだけでも52種類もあり、

花の姿かたちだけでなく、樹皮の色や凹凸の様子まで細かく描かれています。

現在まだつぼみの木が、これからどんな花を咲かせるのか?

ちがいを見比べて予想するのもおもしろいかもしれません。

 

 

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『皇居東御苑の草木図鑑』

近田文弘/解説・写真 菊葉文化協会/ 編

大日本図書

(千代田図書館、四番町図書館、日比谷図書文化館で貸出可)

 

東御苑で育つ草木の写真が400種類以上紹介されています。

東御苑は日本中の公園や緑地の植物を集めた「博物館のような大公園」なので、

全国のさまざまな地域で、同じ植物が見つかるはず。

東京の東御苑と、日本中の身近な自然を比べてみることができます。

 

 

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『散歩で楽しむ花の本 原寸大』

植木裕幸/写真 八木下知子、酒井巧/ 文

山と溪谷社

(千代田図書館、四番町図書館、日比谷図書文化館で貸出可)

 

庭や公園でよく見かける70種類の花の写真が原寸大で紹介されているので、

花びら、茎、葉のかたちや色などの特徴をつかみやすく、

植物について詳しくなくても、この本で見た花をさがしてみたくなるでしょう。

名前の由来や、植物が登場する文学作品などの雑学も豊富に掲載されています。

 

草木が次々に花開く季節を間近に控えたこの時期、

本を読んで植物を知り、春の訪れをさがしに出かけてみませんか?

Posted at:10:00

コンシェルジュ通信Vol.9:戦前の出版事情を知る2冊

かつて神田駿河台に「岡書院」という出版社がありました。

現在の千代田区神田駿河台一丁目、

明治大学の向かい、杏雲堂病院の付近です。

文化人類学関係の出版社で、『南方熊楠全集』や

柳田國男の『雪国の春』を出版したり、

『広辞苑』の前身『辞苑』を企画したりと、

非常に大きな功績を残しました。

その創業者、岡茂雄が書いた本が『本屋風情』です。

 

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『本屋風情』

岡茂雄/著

中央公論社

 

この本は第一回日本ノンフィクション賞を受賞していますが、

それもそのはず、明治から昭和にかけて活躍した著名な学者たちと、

その学者の本を作る出版社との生々しいエピソードが赤裸々に描かれています。

 

本のタイトル「本屋風情」の由来もユニークです。

ある時、岡茂雄が民俗学者の柳田國男の機嫌を損ねたことがあり、

日銀総裁や大蔵大臣をつとめた渋沢敬三がそれをとりなすために、

自宅で食事会を開催してくれたことがあったそうです。

それでも柳田の機嫌は直らず、

「なぜ本屋風情を同席させた」と言われたことから、

「本屋風情」という言葉に愛着をもつようになり、

タイトルにした…と「まえがき」で言っています。

 

それでは岡茂雄と柳田國男は仲が悪かったのかと思いきや、

「柳田邸、朴の木は残った」という一章では、

柳田國男の自宅に招かれたときに、

「朴の木は好きだがみんな枯れてしまい、枯れるのを見るのが嫌だ」

という話をきいた岡茂雄が、

枯れない丈夫な朴の木を選び抜いて、

サプライズでプレゼントしたときの、

柳田國男の戸惑いながらも喜ぶ様子が詳しく描かれています。

岡茂雄が描くエピソードからは、高名な学者たちの

決して象牙の塔の住民ではない、人間らしい部分が垣間見えます。

 

 

その岡茂雄自身もなかなかユニークな人物だったようです。

『本屋風情』の「落第本屋の手記」という章によると、

岡書院では店員も来客も昼食はあんぱんそばに限り、

相手が渋沢敬三でも金田一京助でも

それ以外はいっさい出さぬことにしていた、という徹底ぶり。

 

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『街道をゆく三十六 本所深川散歩神田界隈』

司馬遼太郎/著

朝日新聞社

 

司馬遼太郎の『街道をゆく三十六 本所深川散歩神田界隈』には、

「三人の茂雄」という一章があります。

こちらには岡茂雄の息子から聞いた話として、

「出す本ごとに本を床に叩きつけて、こわれないかテストをしていた」

というエピソードが紹介されています。

岡茂雄は「造本の要諦のひとつは、書物をこわれないようにすることだ」

と言っていたそうで、本の「装幀(そうてい)」の漢字を

装釘」と書くほどのこだわりを見せています。

ちなみに、三人の茂雄というのは岡茂雄と、

出版社の岩波書店創業者の岩波茂雄

古書肆弘文荘の店主の反町茂雄のことです。

 

 

岡書院は大正13年に創業、昭和10年ごろまで続いたようですが、

岡茂雄の残した数々のエピソードは微笑ましいばかりでなく、

当時の出版事情を知る上でも非常に興味深い資料です。

『本屋風情』は既に絶版となっていますが、

千代田図書館に所蔵がありますので、

ご興味がある方はぜひご覧になってみてください。

Posted at:12:00

千代田人セレクション:岩田副館長のおすすめ本

今回は、2015年10月に就任した千代田図書館の岩田副館長に

最近読んだ本からお気に入りの4冊について語っていただきました。

 

『且座喫茶』

いしいしんじ/著

淡交社

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高校時代に少しだけかじった茶道を、7年前より再開しました。

表千家に入門し、月3回のおけいこを行っています。

茶道の世界は着物姿の女性たちに占領されてしまいました。

「男もお茶を」と同年輩の男友だちに声をかけ、同志を引き込み、

アラ還コンビがトリオから四天王になり、いまでは五人男に増殖しています。

数ある社中でも、男性がこれだけ多いのは珍しいそうです。

 

こうした経験を経て出合ったのが、昨年10月刊行の『且座喫茶』です。

書き手は物語作家として定評のある、いしいしんじさん。

一昨年、著者のお顔は、銀座の「gggギャラリ-」で初めて目にしました。

いしいさんの文章に絵本作家の荒井良二さんが絵をつけていくというイベント。

姿かたちも物言いも、きわめてアバンギャルドに見えました。

 

書き出しは、そのイメージ通りです。

 

 先生宅の門をくぐったとき、僕はアロハシャツにジーンズ、

 腕にはかかえきれないくらいの茶花を、巨大な花束にして、

 おみやげに、ともっていった。

 

おけいこをくりかえすうちに、いしいさんは「真剣」になります。

 

 戦国武将たちにとって、茶碗にたたえられた濃茶は、

 あまりに強烈すぎて補色に裏返った、

 みどりの血に見えていたかもしれない。

 

 日々、赤い血にまみれていた戦国の武将たちは、

 みどりの血、光の血を欲し、「和」を求めていった。

 それは、ただ安寧を、長閑さを欲するのとはちがう、

 命がけの「和」だったのではないだろうか。

 

この本では、「真剣」の意味に思いをめぐらせた筆者が

僧侶、牧師、陶芸家、茶杓師、鋳物師、和菓子作家などの茶事や茶会に参加し、

亭主とのやり取りや茶室で感じたことを綴っています。

 

 「帛紗さばきと、聖杯をきよめるしぐさは、ほとんど同じですよ」

 薄茶の席、鐘の残響のような余韻のなか、高橋牧師はにこやかに話す。

 「汝の敵を愛せよ、って、お茶席のことでしょう。

  狭き門から入れっていうのは、つまりにじり口。

  利休の侘茶は、キリシタンの教えと大いに重なるんです」

 僕はこの席に、全身タータンチェックの服で座っている。

 

こんな調子で、いしいしんじの世界に誘っていきます。

「且座喫茶」は、「しゃざきっさ」と読みます。

禅語で、しばらく座ってお茶でも飲もうよ、という意味です。

 

 

『僕の場所』

隈研吾/著

大和書房

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新しい国立競技場の設計を担当することになった隈研吾さんのエッセイ。

建築家を志したのは、東京オリンピックのときに丹下健三設計の体育館に接し、

打ちのめされたのがきっかけというのですから、ふしぎな巡り合わせです。

 

「反建築」「反個人住宅」など刺激的な仕事の源泉は、

マックス・ウェーバー、エンゲルス、吉田健一、梅棹忠夫などの読書から。

森の中にいるような柔らかい光が射し込む空間が評判を呼び、

初年度の来館者数が100万人を超えることが予想されている、

昨夏に開館した富山市立図書館「TOYAMAキラリ」も手がけました。

 

 

『神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く―』

石井光太/著

新潮社

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アジアのイスラム教信者が多い国のフーゾク地帯に住みついて、

生きぬいている人々を「性」の視点から見つめた体験的ノンフィクション。

13歳の娼婦、中年になったニューハーフなどなど、

読み進むのがつらくなるほどの、想像を絶する現実に圧倒されます。

固定観念にとらわれがちな「イスラーム」が、まったく違って見えてきます。

 

 

『かないくん』

谷川俊太郎/文

松本大洋/絵

東京糸井重里事務所

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人は死んだらどうなるのか。

普遍的かつ根源的なテーマに製作者たちは大まじめに取り組み、

文と絵とデザインが協調し合ったすばらしい絵本を作り上げました。

今年度、第49回造本装幀コンクールの「読書推進運動協議会賞」受賞作品です。

 

日比谷図書文化館で1月23日(土曜日)から始まる

特別展「ブックデザイ」の主人公「祖父江慎+コズフィッシュ」が、

ブックデザインを担当しています。

装幀には、図書館をちょっとだけ困らせるような仕掛けも隠されています。

 

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◇◆岩田副館長のプロフィール◆◇

岩田 玄二(いわた・げんじ)

2011年、38年間の編集者生活をすごした講談社を退社。

在職中は、『週刊現代』『ホットドッグ・プレス』などの雑誌、

『日本美術全集』『ディズニーリゾート物語』などの書籍を担当。

2015年、公益社団法人読書推進運動協議会事務局長を退任。

同年10月より、千代田区立千代田図書館に勤務。

 

岩田副館長、ありがとうございました!

ご紹介の4冊はどれも千代田区立図書館に所蔵しています。

この機会にぜひ、ご一読ください。

Posted at:10:30

コンシェルジュ通信Vol.1:コンシェルジュ亀山おすすめの1冊

 

今月から毎月「コンシェルジュ通信」として、

千代田図書館コンシェルジュの視点から本に関する話題を

お届けしてまいります。

今回はコンシェルジュ亀山から、

2015年4月に刊行されたばかりの1冊を紹介します。

 

 

千代田区ゆかりの文学者、泉鏡花。

2013年には生誕140周年ということで、

その作品を美しい絵本にした『絵本化鳥』が発行され、

千代田図書館でも原画展サイン会&親子イベント

開催されたのを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

 

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あれから2年、『絵本化鳥』の挿絵を手掛けた

イラストレーターの中川学さんによる、

泉鏡花作品の絵草子『朱日記』が刊行されました。

 

『絵本化鳥』は小学生以下のお子さまでも読めるように

鏡花の原文を易しく編集した「絵本」でしたが、

今回の『朱日記』は鏡花の原文そのまま、

中高生~大人向けの「絵草子」です。

 

主人公は、とある小学校の教頭補である雑所(ざっしょ)先生。

五月半ばにもなるのに肌寒い、

風の強い日の昼前から物語は始まります。

 

雑所先生はその前日、

山のなかで赤合羽を着た不気味な坊主に出会い、

その坊主から「城下を焼きに参るのじゃ。」

と告げられたことを気にしています。

 

物語が進むにつれて、不穏な予兆は少しずつ積み重なり、

ついに街は大火災に襲われてしまうのですが、

どうやらその原因はこの世ならぬモノたちの、

恋愛のもつれのようで…。

 

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 『朱日記』(泉鏡花/文 中川学/画 国書刊行会)

 

今回、中川さんの描く『朱日記』の世界は、

モノクロームが基調の画面に「朱色」が効果に使われていて、

すこしずつ高まる火災の予兆が見事に表現されています。

カバーの下には物語のキーワードになるぐみの実

イラストが描かれている、という凝った装丁(写真右)。

 

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本の見返しやヘドバン(中身の背の上下に貼りつける飾り布)も

目のさめるような朱色(写真左)。

扉は日記帳に赤い炎が重なるような凝った演出で(写真右)、

図書館で借りて読むだけではなく、

自分の手元にも置いておきたくなる1冊です。

 

図書館で借りた本を自分でも購入したいと思った時は、

千代田図書館コンシェルジュの「書籍購入サポートサービス」

をご利用ください。

千代田図書館近隣の書店へ在庫確認や取り置きの依頼を行います。

 

『朱日記』発売記念オリジナルアニメーション公開中!

『絵本化鳥』の原画展の際に館内で放映していたもの

と同じスタッフによるオリジナルアニメーションが

コチラから公開されています。

Posted at:15:30

千代田人セレクション:四番町図書館・宮崎館長のおすすめ本②

 

今回は四番町図書館・宮崎館長のおすすめ本紹介、後半をお届けします!

前半の記事は→コチラからどうぞ。

 

 

前回の記事でご紹介した、『ことばと国家』に書かれている

「最後の授業」のような間違いの例も、グローバル化した現代なら

すぐに修正情報が入ってくると思います。

ネットで抗議が殺到するかもしれません。

 

同じくご紹介した『だから日本はズレている』では、

ソーシャルメディアでの炎上についても、その様相を分析し

著者の古市憲寿氏は、自身の体験から炎上への対処法まで

独特のクールな書き方で示しています。

「独特の」と書きましたが、この姿勢こそ大事ではないかと

私は感じています。

誰もが「少し」わかっていることを、きちんと体系立て

根拠を示してまとめることで、その中に新しい常識が

生まれているのだと思います。

だからこそ、多くの人の心をとらえるのでしょう。

 

ずっと以前に私の心をとらえた大切な一冊があります。

私が「社会人」になり、自分の立場が、学生から「大人」となって

責任を感じ、しかも生きていくためには稼がねばならないという

価値観の変遷期に、何が正しいのか、どう生きるのかという

内面の問題と向き合った時、出会ったのがこの本です。

これはその後、現在まで私の傍にある本たちの中の一冊となっています。

 

『論語と算盤』

渋沢栄一/著

国書刊行会

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日本の資本主義の父とも言われる渋沢栄一の著作なので、

経営者のバイブルのようにとらえられているかもしれません。

題名から、「論語」などと見ると敷居が高いように感じますが、

読んでみるとたいへんわかりやすく、仁義道徳と富についての

考え方が述べられています。

たとえば、富を作るという一面には常に社会に恩義があり、

得義上の義務として社会に尽くすようにとし、

「岩崎さんや、三井さんにも是非ひと奮発してもらわねばならぬ」など、

当時の関係が分かる部分など、読んでいておもしろい側面もあります。

 

ただ著者は、岩崎弥太郎、三井高福とは違う生き方をしました。

多くの大企業や事業に関わりましたが、財閥にはなっていません。

この本は、私にとっては生き方の本です。多岐に渡る渋沢の野太い言葉が、

彼の学んできたものと実績の融合で生まれた言葉として心に残ります。

 

全体を見て個々の有り様を意識するバランス感覚が必要だと

私は常々思っています。そのために必要な知識やスキルを、

先人も若者も情報やデータや経験で培っています。

時代は変わっても、国や性別や立場や年齢や様々な違いはあっても

小さくて影響なんてしないと感じても

「個々の活動が世界を作っている」と思うと、

今をきちんと、ひっそりと頑張ることは無駄ではないように感じるのです。

 

皆様の活動の中で、それぞれの使い方で本を手に取ってほしい。

そういうわけで、今日も私は書架の中に立っています。

  

 

宮崎館長、ありがとうございました!

ご紹介の本は、どれも千代田区立図書館に所蔵しています。

ぜひお手に取ってご覧ください♪

 

 

 

Posted at:16:00

千代田人セレクション:四番町図書館・宮崎館長のおすすめ本①

 

区内の様々な分野で活躍している“千代田人”に

おすすめの本を紹介していただく「千代田人セレクション

今回の担当者は四番町図書館の宮崎館長です。

 

いつもにこやかに、おはなし会や絵本の読み聞かせセミナー講師を務める

宮崎館長がおすすめ本として挙げたのは、意外にも(?)骨太な本ばかり。

今回から、二回に分けてお送りします。

千代田区立図書館に所蔵の本ばかりですので、

この機会にぜひお手に取ってみてください!

 

 

『だから日本はズレている』

古市憲寿/著

新潮新書

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「ズレてる」なんて言われると、「社会人」としてはぎくりとしないでは

いられません。この本は、タイトルを見た瞬間に失笑しながら、

何を書いてあるのかページをめくらずにはいられませんでした。

 

若い社会学者である著者は冒頭で、

「日本の中の様々な『ズレ』を本書で明らかにしていきたい」と

言いながら「僕の方がズレている可能性もある」と始めています。

なぜなら、大企業で働いたこともなく、受験に苦しむ経験や、

就活の経験もなく、「既得権益」の半部外者として暮らしてきたからと

自分の立ち位置を明確にしています。

なるほど、自ら客観的な位置に自分を置いている著者が見る

「大人」の日本社会への表現はつい笑ってしまいます。

 

電車の中では読めない。

 しかし、決して面白いばかりの本ではありません。

「強いリーダー」を求める背景を分析して見せ、個々のあり方の

矛盾を示し、むしろリーダーが不在でも大丈夫な

「豊かで安定した社会を築いた」ことを誇ればいいと言います。

「憲法改正草案」をポエムのようだといい、一般的に使われる

「社会人」という言い方が日本独特な事と、その奥にあるものを

分析して見せます。失笑しては、そうだそうだと納得です。

 

戦後の事や自分の若いころの事には、読みながらそんな時代だったと

昔を思い出し、あれ!?著者は20代だったよね!?と、

その資料収集と分析には驚かされます。

 以前に新聞のコラムで、著者が小学生の時のことを書いた記事を

読んだことがあります。夏休みの自由研究ではなく、

普段興味を持ったことを調べて一冊のノートにまとめるということを

遊びのように楽しんでいた様子が書かれていました。

著者のアカデミックスキルは小学生のころから

積み重ねられたもののようです。

司書としての私の立場からは大いに気になるところです。

 

最後の章(このままでは「2040年」の日本はこうなる)は、抱腹絶倒です。

そして本書を閉じると、「では、今どうしたらいいのか」と

考えずにはいられません。

 

『ことばと国家』

田中克彦/著

岩波新書

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最近、日本人としての自分を意識しないではいられないことが

色々とありました。2020年の東京オリンピック、憲法改正問題、

イスラム国の事件…。

そこで、言葉から国家や民族を考えるこの本をご紹介します。

 

人が生まれて母に育てられるとき一番初めに出会うのが

母の言葉であることから「母語」と呼び、

それが第一言語とする考え方を示し、言語に優劣はないが、

言語によって生まれる差別、権力や政治の介入などを

言語学の立場で著したものです。

 

当時、言語学を少し退屈なものと感じていた私は、著者の独特の視点に

驚きながら読みました。またその中で、子どもの頃読んだ

『最後の授業』(ドーテ作)についての記述は印象的でした。

フランスのアルザス地方の小学校で戦時下、フランス語を

禁止されたため、フランス語の先生が母国語に対する意味を感動的に話し

「フランスばんざい」と黒板に書いて最後の授業を終えるという内容で

当時の子どもだった私は、母国語の大切さや言葉で自由になるという

考え方を学び、教科書にも載った作品でした。

 

しかし、実はアルザス地方の人々の母語はフランス語ではなく

その地に独特のアルザス語が母語で、言語的解放運動の問題を

はらんだ作品だったということを本書で知りました。

 社会言語学という立場からの興味深い1冊で、

今こそまた読んで欲しい本です。

 

 

宮崎館長のおすすめ本紹介は次回に続きます!

Posted at:18:00

千代田人セレクション:コンシェルジュ稲川いちおしの"怪談本"

今回は、区内の様々な分野で活躍している“千代田人”

おすすめの本を紹介していただく「千代田人セレクション」をお届けします。

 

今回の担当は、千代田図書館きっての「怪談通」コンシェルジュ・稲川

暑さがまだまだ衰える気配のないこの季節にぴったりの

“怪談本”をおすすめしてもらいました。

 

私は怪談が大好きで、毎日怪談ばかり読んでいます。

もともと母が怪談好きだったこともあり、幼い頃に布団の中で

聴かされるのは小泉八雲『耳なし芳一』『鳥取のふとんのはなし』でした。

やがて自分で本を読む年齢になったときに夢中になったのが、

母の書棚にあった中島河太郎紀田順一郎によるアンソロジー『現代怪談集成』でした。

(※アンソロジー=複数の作家の作品を、ある基準で選び集めた本)

 

『現代怪談集成』

中島 河太郎/編

立風書房

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この本は1982年に上下巻で発売され、

なぜか我が家には下巻しか無かったのですが、

1993年に合本が発売されたのを購入、今でも年に1回は読み直しています。

 

八雲、鏡花、綺堂に百閒などの明治の文豪の作品から、

映画「ゴジラ」の原作者として知られる香山滋など

昭和の作家の作品までが収録されていて、

個別の作品は今ではなかなか手に入らないものも多く、

珠玉の怪談セレクションと言わざるを得ない1冊だと思います。

特に新羽精之の「進化論の問題」小松左京の「骨」はSF風味の作品ですが、

その結末がうっすらと分かりかけてきたときに背筋が寒くなること請け合いです。

 

 

怪談作品と言えば怪談実話を思い描く方も多いと思います。

毎年、夏になると書店やコンビニエンスストアで手軽に読める

怪談実話の文庫本や雑誌が多く発売されますが、

数多ある怪談実話本の中でも、『文藝怪談実話』はちょっと趣が異なります。

 

『文藝怪談実話』

遠藤 周作 ほか/著 

筑摩書房

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泉鏡花や喜多村緑郎らが実際に開催した怪談会が舞台の「田中河内介」の怪談、

佐藤春夫や稲垣足穂が住んだ道玄坂の化け物屋敷の話、

三浦朱門と遠藤周作が一緒に泊まった熱海の旅館で遭遇した幽霊の話など、

文豪が実際に体験したという実話が集められているのです。

本気で幽霊を怖がる思いがけない文豪の一面を垣間見ることもできる1冊です。

 

 

怪談実話のなかでも歴史があるのは、

江戸時代に旗本の根岸鎮衛によって書かれた『耳袋』です。

この本は根岸が同僚や知人から聞き取った

珍談・奇談が集められた随筆集なのですが、

それを小説家の京極夏彦が現代の怪談実話風の語り口にアレンジしたのが

『旧怪談(ふるいかいだん)―耳袋より』です。

 

『旧怪談―耳袋より』

京極 夏彦/著 

メディアファクトリー

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現代の文章なのでとても読みやすく、各話ごとに原文もついていますので、

語り口の変化による怖さの違いも楽しめます。

 

根岸鎮衛は南町奉行を務めるなど、江戸幕府の役人でしたから、

聞き集めた話の中には江戸城の周辺である千代田区が舞台のものもあります。

聞き覚えのある場所や自分が通い慣れた道が怪談に登場すると、

いくら江戸時代の話とはいえ、ぞっとしますね。

猛暑が続くこの夏はぜひ、怪談で涼をとってみてはいかがでしょうか?

 

 

残暑の折、怪談を読んで背筋がヒヤリとするような体験もいいのでは?

紹介した本は、どれも千代田区立図書館に所蔵の本ばかりですので

ぜひ手に取ってみてください。

 

 

Posted at:09:00

お茶小・小林校長先生がお気に入りの本

前回の「千代田人セレクション」でご登場いただいた

お茶の水小学校の校長先生が、子どもの頃に読んでいた

お気に入りの本を教えてくれました。

夏休みにピッタリの本なので、皆さんもぜひ手にとってみてください♪

※以下ご紹介するものは、先生が当時実際に読んでいたものとは

 訳者・出版社などが異なる場合もあります。

 

『君たちはどう生きるか』吉田源三郎・著

*先生が中学生のときに読んで、影響を受けた本

 

 

『二年間の休暇』

ジュール・ベルヌ作 福音館書店 

*『十五少年漂流記』と内容(原作)は同じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

『飛ぶ教室』

ケストナー・著 丘沢静也・訳

光文社古典新訳文庫 光文社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『三国志』

吉川英治・著 

吉川英治歴史時代文庫 講談社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生のお母様がハヤカワミステリーをよく読んでいて

ご自宅に本がたくさん揃っていたことから、

先生も本を読むようになったそうです。だから

「怪盗ルパン」や「シャーロック・ホームズ」も

先生の大のお気に入りなんだとか。

 

また、子どもの頃に読まれた本ではありませんが、

もう一つ、先生のおすすめの本をご紹介します。 

 

 

『おはなし千代田』 千代田区 平成元年

 

千代田区にまつわる学校やひとびとの話、江戸城、町のうつり変わり、言い伝えやくらしのあれこれ、などを収録。小中学生向けに発行されたようですが、千代田区を知るのに欠かせない一冊です。駿河台の主婦の友社裏の下宿旅館八幡館(現在の駿河台1丁目2あたり)に宿をとった宮沢賢治のはなし、少年時代の漱石のはなしなど、作家にまつわる話も満載です。

 

 

Posted at:17:40

1冊の本から、遺跡を訪ねての夢

千代田区内のさまざまな分野で活躍している“千代田人”が

おすすめの本を紹介する「千代田人セレクション」をお届けします。

今回は、以前「まちの読書活動」の取材でお世話になった

お茶の水小学校の小林校長先生が【きっかけ本】を教えて下さいました。

とても心温まる、まるで1冊の本になるような、おはなしです。

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~1冊の本から、遺跡を訪ねての夢~ 

 『児童百科事典』全24巻 平凡社(1951)

  

私は、小さい頃から世界の遺跡に興味・関心がありました。

それは、今の世界を築いた地球上の先人の文化・文明の証

だからです。そのきっかけを作ってくれたのは、小学校時代

に父が買ってくれた平凡社の『児童百科事典』でした。

さまざまな事柄が掲載されている百科事典に、私は夢中になって

第1巻から最後の第24巻まで何度も読み直しました。

 

その中で、特に興味・関心をもったことは、

第1巻に記載されていた「イースター島」でした。

南太平洋の真ん中にある小さな島「イースター島」にある

「モアイ」の石像、誰がいつ、何の目的で作ったのか、

世界の七不思議のひとつであるこの石像を、ぜひ自分の目で

見たいと思う気持ちが強くなりました。

 

ようやく教師になって27歳のとき、

念願の「イースター島」に行く旅に出ました。

その頃は、飛行機の直行便がなく、アメリカのロサンゼルス・

ペルーのリマ・チリのサンチャゴを経由し、

3日を経て、ようやく南海の孤島に到着しました。

すぐに巨大なモアイの石像を見たときは、

長年の夢が実現したことに、感動しました。

 

その後、遺跡を訪ねての旅を数回しました。

今、世界遺産で有名になったペルーのマチュピチュ、

ナスカの地上絵、パキスタンのモヘンジョダロ、

アフガニスタンのバーミアンの遺跡等です。

 

今は、海外へはなかなか行けませんが、

国内の遺跡や歴史的な史跡を訪れています。

特に、秋に開催される奈良の「正倉院展」には

時々行っています。

 

このようなきっかけを作ってくれたのは、

幼いときに父の買ってくれた百科事典でした。

 

さて、私の夢は私だけでなく、

自分の教えた子どもにも伝わりました。

麹町小学校での担任をしている時に、

イースター島の話を子どもたちにしました。

 

その話を聞いていた山本君は、モアイに興味をもち、

大学時代にアルバイトでお金を貯めて、

イースター島に行ってきました。そのお土産に、

モアイの石像のミニチュアを私に、届けてくれました。

今、私の傍に二体のモアイのミニチュアが置かれています。

 

[左]山本君からのお土産 

[右]小林校長先生がお持ちのモアイ像

 

この二体のモアイは、私の宝物です。

自分の夢を、子どもが受け継いでくれた喜びを感じます。

教育に関わる人間として、このような心のリレーを、

これからも大切にしていきたいと思います。

  

★紹介者プロフィール★  

所属 お茶の水小学校 校長

名前 小林勇司 

教師生活37年目。大島も含む、都内各地

の小学校で勤務。千代田区立昌平小学校、

千代田小学校の教頭を経て、お茶の水小

学校長に就任2年目。学生時代に図書館

でのアルバイト経験もあるという読書家。

Posted at:18:30

この本の魅力を追求したい!

今日は千代田区内の様々な分野で活躍している“千代田人”が

おすすめの本を紹介する【千代田人セレクション】をお届けします。

前回に引き続き、千代田図書館コンシェルジュの押田径子さんに

おすすめの本を聞きました。

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千代田図書館コンシェルジュの押田径子さんが、

進路を決めるきっかけになった【きっかけ本】

 

『ライ麦畑でつかまえて』

著者 J.D.サリンジャー

訳者 野崎孝

出版社 白水Uブックス

定価 830円

ISBN 4-560-07051-2


 

進路を決めるきっかけになった本です。

短大時代、ヘミングウェイやサロイヤンなどの短編小説を学びました。

物語の背景にその時代の出来事が影響を与えていることを知った時、

小説の面白さと奥深さを感じました。

身を隠すように生活する「謎めいた作家」サリンジャーに魅かれ、

この作品に出会いました。主人公ホールデンが愛おしく、

作品の魅力を追求したいと思い、短大から大学への編入を志しました。

 

the catcher in the rye”になりたいという夢を抱く

ホールデンは、インチキな大人の世界を拒否し、

無垢な子供の世界に留まることを望みます。

それを「甘え」と言う人もいるかもしれません。

インチキへの反抗は、無垢への固執が原因と思いますが、

子供が持つ純粋なものを守るための手段であり、

それは、自分の存在を確実に認められるものを見つけるために

苦悩する若者の姿であると私は感じました。

 

大学へ編入後、私は「万人に共通するホールデン的経験」と

テーマを定め、卒業論文を書きました。

本が出版された1951年、この50年代アメリカの時代背景や、

16歳という多感な青年期の心の動きを知るため、

それらに関する本を読みながら理解を深めました。

物語にまつわるさまざまなものへ興味が広がり、

新しい世界を知るきっかけにもなりました。

 

ホールデンの最愛の妹フィービーが、雨の中、回転木馬に

乗る姿を、優しく見守る彼の姿が印象的です。

卒業旅行でニューヨークへ行き、ホールデンが歩いた

セントラル・パークやアメリカ自然史博物館を訪れた際は、

好きな人に会いにいったような気分になりました。

 

青春時代を懐かしみながら、また、ニューヨーカー気分を

味わいたい時に読んでみるのもおすすめです。

 

 

★紹介者プロフィール★

所属 千代田図書館

担当 コンシェルジュ

名前 押田径子

図書館コンシェルジュ歴4年目。

図書館内や神保町の「本と街の案内所」

では、本探しのお手伝いや街案内の全般

を行い、イベント等では司会も担当する。

Posted at:18:30

ありふれた日常の中の神秘性に気づいた本

この「千代田人セレクション」カテゴリでは、区内の様々な分野で

活躍している“千代田人”におすすめの本を紹介していただきます。

初回となる今回は、千代田図書館コンシェルジュの押田が

 ★何度も読み返してしまう【バイブル本】

 ★人生の岐路での進路を決めた【きっかけ本】

の2冊を紹介します。(2回に分けてお届けします。)

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千代田図書館コンシェルジュ押田径子さんが

何度も読み返してしまう【バイブル本】

 

『影法師』より「もし」

著者 遠藤周作

出版社 新潮文庫(昭和49)

参考価格 440円

ISBN 4-10-112307-1

 

 


 

大学時代に出会い、年に一度は読み返しています。

恩師が一番好きな本が「もし」でした。

厳しいことで有名な先生でしたが、授業は、

専門のアメリカ文学の他、さまざまな本や先生ご自身の

体験にまつわる話がとても興味深く、朝一番の授業を

毎回楽しみにしていました。その先生が好きな本と知り、

早速読んでみました。ちょうどその頃、私自身が初めて

経験する大きな壁にぶつかっていた時でもありました。

 

作品の中で、「僕」によってモニックさんの人生が大きく

変わったように、自分が他人の人生を横切ることで、

相手の人生を大きく変えてしまうことがあります。

「もしあの時あの人と出会わなかったら・・」というように、

「もし」という偶然には、実は大きな意味があるのではないか

という作者の思いに強く共感しました。

さまざまな偶然の重なりの中に、今の自分が在ることに気づいた時、

自分に起きた出来事や出会った人々が

とても貴重に思えました。また、普段の何気ない生活が、

魅力的に感じるようにもなりました。

 

当時ぶつかっていた壁を今は乗り越えています。

壁の前でもがいていた時期に、「もし」が重なり、

さまざまな出会いがあり、

今の自分へつながる方向へ導かれたように思います。

図書館では、ほんの一瞬の挨拶や会話を繰り返しながら、

毎日たくさんの人に出会います。大げさかもしれませんが、

その一瞬が誰かにとっての「もし」につながるかもしれない

と考えると、心地よい緊張感が絶えません。

 

わずか16ページの物語ですが、ありふれた日常の中にある

神秘的な出会いに気づくことができるはずです。

どんな人にもどんな状況にもおすすめします。

 

★紹介者プロフィール★

所属 千代田図書館

担当 コンシェルジュ

名前 押田径子

図書館コンシェルジュ歴4年目。

図書館内や神保町の「本と街の

案内所」では本探しのお手伝い

や街案内の全般を行い、イベン

ト等では司会も担当する。

 

 

Posted at:10:00