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2015.02.27
千代田人セレクション:四番町図書館・宮崎館長のおすすめ本① |
区内の様々な分野で活躍している“千代田人”に
おすすめの本を紹介していただく「千代田人セレクション」。
今回の担当者は四番町図書館の宮崎館長です。
いつもにこやかに、おはなし会や絵本の読み聞かせセミナー講師を務める
宮崎館長がおすすめ本として挙げたのは、意外にも(?)骨太な本ばかり。
今回から、二回に分けてお送りします。
千代田区立図書館に所蔵の本ばかりですので、
この機会にぜひお手に取ってみてください!
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『だから日本はズレている』
古市憲寿/著
新潮新書
「ズレてる」なんて言われると、「社会人」としてはぎくりとしないでは
いられません。この本は、タイトルを見た瞬間に失笑しながら、
何を書いてあるのかページをめくらずにはいられませんでした。
若い社会学者である著者は冒頭で、
「日本の中の様々な『ズレ』を本書で明らかにしていきたい」と
言いながら「僕の方がズレている可能性もある」と始めています。
なぜなら、大企業で働いたこともなく、受験に苦しむ経験や、
就活の経験もなく、「既得権益」の半部外者として暮らしてきたからと
自分の立ち位置を明確にしています。
なるほど、自ら客観的な位置に自分を置いている著者が見る
「大人」の日本社会への表現はつい笑ってしまいます。
電車の中では読めない。
しかし、決して面白いばかりの本ではありません。
「強いリーダー」を求める背景を分析して見せ、個々のあり方の
矛盾を示し、むしろリーダーが不在でも大丈夫な
「豊かで安定した社会を築いた」ことを誇ればいいと言います。
「憲法改正草案」をポエムのようだといい、一般的に使われる
「社会人」という言い方が日本独特な事と、その奥にあるものを
分析して見せます。失笑しては、そうだそうだと納得です。
戦後の事や自分の若いころの事には、読みながらそんな時代だったと
昔を思い出し、あれ!?著者は20代だったよね!?と、
その資料収集と分析には驚かされます。
以前に新聞のコラムで、著者が小学生の時のことを書いた記事を
読んだことがあります。夏休みの自由研究ではなく、
普段興味を持ったことを調べて一冊のノートにまとめるということを
遊びのように楽しんでいた様子が書かれていました。
著者のアカデミックスキルは小学生のころから
積み重ねられたもののようです。
司書としての私の立場からは大いに気になるところです。
最後の章(このままでは「2040年」の日本はこうなる)は、抱腹絶倒です。
そして本書を閉じると、「では、今どうしたらいいのか」と
考えずにはいられません。
『ことばと国家』
田中克彦/著
岩波新書
最近、日本人としての自分を意識しないではいられないことが
色々とありました。2020年の東京オリンピック、憲法改正問題、
イスラム国の事件…。
そこで、言葉から国家や民族を考えるこの本をご紹介します。
人が生まれて母に育てられるとき一番初めに出会うのが
母の言葉であることから「母語」と呼び、
それが第一言語とする考え方を示し、言語に優劣はないが、
言語によって生まれる差別、権力や政治の介入などを
言語学の立場で著したものです。
当時、言語学を少し退屈なものと感じていた私は、著者の独特の視点に
驚きながら読みました。またその中で、子どもの頃読んだ
『最後の授業』(ドーテ作)についての記述は印象的でした。
フランスのアルザス地方の小学校で戦時下、フランス語を
禁止されたため、フランス語の先生が母国語に対する意味を感動的に話し
「フランスばんざい」と黒板に書いて最後の授業を終えるという内容で
当時の子どもだった私は、母国語の大切さや言葉で自由になるという
考え方を学び、教科書にも載った作品でした。
しかし、実はアルザス地方の人々の母語はフランス語ではなく
その地に独特のアルザス語が母語で、言語的解放運動の問題を
はらんだ作品だったということを本書で知りました。
社会言語学という立場からの興味深い1冊で、
今こそまた読んで欲しい本です。
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宮崎館長のおすすめ本紹介は次回に続きます!
Posted at:18:00