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2023.01.05
千代田区立図書館ゼネラルマネージャーの読書日記 「今年最初に読みたい本」 |
新年最初のブログは、昨年就任した千代田区立図書館 後藤慎治ゼネラルマネージャーによる読書日記「今年最初に読みたい本」です。
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安宅 和人/著
英治出版
問題だと思っていることのほとんどは、いま解決すべき問題ではない。本当に解決すべき問題は2~3%しかなく、その2~3%の問題をきちんと選択することが重要だと、著者は説いています。
そして、「犬の道」に走るのではなく、今、本当にやるべきこと=「イシュー」を見極めることが大切であり、「犬の道」に入り込むと、価値のある仕事は永遠に生み出されず、変化もおこせず、疲れるだけだと述べています。
東京大学大学院で修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、イェール大学脳神経科学プログラムを経てヤフー株式会社へ転職という異色のキャリアの著者が贈る同書は、12年前に発売されて以来ベストセラーのビジネス書です。
さて私は、世界がコロナ禍に見舞われて3年が過ぎ、未知のウイルスへの危機感は薄れてきたものの、私たちの精神構造にもたらした影響は大きいと考えています。911米同時多発テロ事件の以前と以後で私たちは変わってしまったように、コロナ禍が完全に去ったとしても、もう以前の世界とは違うという気がします。少なくとも私は、家族、仕事、趣味、幸せなどへ価値観との対峙が更新されました。
自分にとって豊かな幸せな人生とは何であるのか、そこへたどり着くためには何が足りておらず必要で、本当に大切な問題は何なのか。そのような思いを巡らせている方もいるでしょう。いくら頑張って働いて出世しても、リア充を追い求めてSNSを更新しても、なかなか幸せに近づけない感覚を、日本経済の停滞と社会の先行きに対する閉塞感も相まって、これまで以上に多くの人が抱えている気がします。
私自身もそのひとりであり、同書は発売当初に拝読しましたが、ビジネス書ではなく人生の指南書として、いま一度読み返したいと思います。
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『時間は存在しない』
カルロ・ロヴェッリ/著、冨永 星/訳
NHK出版
年の初めは、クリストファー・ノーラン監督作品を一気見しようと思っています。映画「メメント」「インセプション」「インターステラー」「ダンケルク」「TENET テネット」などなど、同監督は時間がテーマの作品が特徴的で広く知られています。
私たちは、産まれてから死ぬまで時間に支配され、時間を意識して日々を過ごしますが、人生から切り離すことのできないこの時間というものの存在について、ちゃんと説明できる人は少ないと思います。
「時間は誰にでも平等」というフレーズを耳にしますが、それは本当でしょうか。1日24時間を有効活用できる人とそうでない人とでは時間の濃度が違う、という意味合いではなくて、私の1分間が過ぎるスピードは、本当に他の人と同じなのでしょうか。
同じ歳でも若い人と老けている人とでは、そう見える、という視覚的な感覚の曖昧な印象で片付けてしまいがちですが、それは肉体が老化するスピードが違うわけです。ひとそれぞれ個々の老化速度が違うのに、60秒が過ぎるスピードは、あなたと私とで同じなのでしょうか。
まったくの文系だった私には、さっぱり分かりません。だからといって、人生の折り返し点をとうに過ぎた今から相対性理論や熱力学第二法則を学べるほどの情熱も忍耐もなく、とりあえず同書を読んでふむふむと分かったつもりになって、好きな映画を一層楽しみたいと思います。
ちなみに、ノーラン監督はインターネット嫌いを公言しており、パソコンやスマートフォンなどのインターネットを想起させるアイテムが劇中に登場することは稀です。
「ネットのせいでみんな本を読まなくなった。書物は知識の歴史的な体系だ。ネットのつまみ食いの知識ではコンテクストが失われてしまう」と語っており、スマホはおろかメールアドレスも持っていないそうです。
図書館に勤める私としては、ちょっと嬉しいコメントです。
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後藤ゼネラルマネージャーの読書日記をお届けしました。
年初こそ、読み返したい本をもう一度開いたり、ずっと気になっていたことを検索してみたりするのに良い機会ではないでしょうか。そんな知への入り口に、図書館がお手伝いをできれば幸いです。
今年も「ちよぴたブログ」をどうぞよろしくお願いいたします!
Posted at:11:00