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2021.03.24
"桜"と聞いて思い浮かぶ作品は? |
桜が見頃を迎えています。
千代田図書館からほど近い千鳥ヶ淵の桜も満開になりました。
さて。"桜"と聞いて、みなさんはどんな作品を思い浮かべますか?
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
という一節が頭に浮かんだものの、これが書かれている小説のタイトルは何だったか...読書家の方にとっては愚問になってしまうかと思いますが、今回はその答えを探しつつ千代田区立図書館の蔵書をご紹介します。
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『桜の森の満開の下』(『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』収録)
坂口安吾/著
岩波書店
さきほどのフレーズとともに浮かんできたのが、このタイトル。
しかし読んでみると、書かれているのはこの作品ではありませんでした。私のように混同して覚えていた、という方もじつは少なくないようです。
山賊の男と美しく残酷な女の物語。妖しい魅力に怖ろしさを感じながらも惹きつけられます。読後に夜桜を眺めると、そこにはなんだか不思議な力がうごめいているような気がしました。
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続いて、坂口安吾の『桜の森の満開の下』をベースにして書かれた作品を2つご紹介します。
『桜の森の満開の下』(『新釈 走れメロス 他四篇』収録)
森見登美彦/著
祥伝社
表題作『走れメロス』をはじめとした日本近代文学の名作を現代に置き換えて創作された短編集。その中で、京都の男子学生を主人公にして生まれ変わらせた『桜の森の満開の下』。千代田の桜もよいですが、「哲学の道」など京都の桜も見に行ってみたくなります。どちらか一方だけでももちろん楽しめますが、安吾版と森見版を2作読み比べるといろいろな発見があり、また違った楽しみを味わえます。
野田秀樹/著
新潮社
何度も上演されている、野田秀樹の人気舞台作品の戯曲。『桜の森の満開の下』だけでなく『夜長姫と耳男』などの坂口安吾の小説やエッセイも要素として取り入れられています。
野田秀樹ならではの言葉遊びも楽しめる、壮大な魑魅魍魎の世界が展開するエンターテインメント作品です。
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さて。気になるのは冒頭のあのフレーズ。出てくるのはこちらの小説でした。
『桜の樹の下には』(『檸檬』収録)
梶井基次郎/著
新潮社
なぜ桜の花はあんなに見事に咲くのか。その美しさの理由を「俺」が「お前」に語りかける形式で書かれた短編です。爛漫と咲き乱れる桜の花に対して描かれる屍体の醜さに、思わず顔をしかめてしまいます。生命力と死について考えさせられる内容、と書くと堅苦しく難しそうですが、とても短い作品なのですぐに読むことができます。桜の樹の下で読んで、そのあとにじっくり考察してみるのもいいですね。
気になる本がありましたら、ぜひ図書館へ。
今回ご紹介した本はすべて貸出可能です。
本のなかの世界でも桜をお楽しみください!
Posted at:17:15