【レポート】本と出会う 読書サロン 第22期イベント
講演会「ウィキペディア 情報収集から編集、活用まで」


千代田図書館で月に1回行っている、本を通じた交流の場「本と出会う 読書サロン」。毎回決められたテーマに沿った本を各メンバーが選んで持ち寄り、紹介し合っています。

5月17日(木曜日)、6月から始まる第22期を記念した講演会「ウィキペディア 情報収集から編集、活用まで」を行いました!

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ゲストに元ウィキペディア日本語版管理者海獺(らっこ)さんをお招きし、「ウィキペディアと書籍」というテーマでお話しいただきました。

海獺さんは、約5年間にわたりウィキペディア日本語版の管理者を務め、現在でも精力的にウィキペディアを編集しているほか、学校などでの情報リテラシーに関する講座も行っています。

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私たちが日々行うインターネット検索で、必ずと言っていいほど目にする「ウィキペディア」のページ。そもそもウィキペディアとはどんなもの?そんな話題から講演は始まりました。

ウィキペディアは、現在300もの言語版が存在する、GoogleやYouTubeに続いて世界で5番目にアクセス数が多いサイト。日本語版には132万あまりの項目が存在するそうです。手始めに「2022年4月に閲覧されたウィキペディアの記事ランキング」を見てみると、この春に新しく始まったドラマやアニメ、偉業を成し遂げたスポーツ選手、中には週刊誌のスキャンダル記事などで話題になった人名も...。気になったことを調べるときに、まずウィキペディアの項目を読んでみる、という人も少なくないのではないでしょうか?

しかし「ウィキペディアは読むものじゃありません、書くものですよ」と海獺さん。

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ウィキペディアは「誰でも自由に書ける百科事典」である、ということは広く知られています。でも専門家でもないのに記事を書いたり、編集したりしてもいいの?

ここからはウィキペディアの編集に関する具体的なポイントについて、数冊の本を紹介しながらお話しいただきました。

まず紹介に上がったのが、筒井康隆の作品「美藝公」『筒井康隆コレクション 6』(出版芸術社)収録)。

実際に海獺さん自身が執筆した記事をもとに、どんな情報が書いてあるものが「よい記事」なのか、というポイントを確認していきます。海獺さんによると、ウィキペディアの編集における三大方針は「独自研究は書かないこと、中立的な観点を持つこと、検証可能性があること」。特に「検証可能性」は客観的な事実の積み上げ、つまり出典を伴った表記を必要とするという、編集上の大事なポイント。「美藝公」の記事執筆にあたっては、大宅文庫や様々な図書館に通い情報を集めたそうです。

「ウィキペディアに書いてあることを鵜吞みにしてはいけません。そのかわり、ウィキペディアの信頼性は"情報が常にアップデートされていること"で担保されていると言えます」と海獺さん。

講演の終盤には、実際に編集ページを見せながらリアルタイムで記事を更新する一幕も。シリア出身のドイツ語作家 ラフィク・シャミの項目を、作家人生をつづったラフィク・シャミのエッセイ集『ぼくはただ、物語を書きたかった。』(西村書店)を出典として更新しました。

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記事を編集中の海獺さん。

「情報を調べることができれば、専門家でなくてもウィキペディアを書くことができます。記事が間違っている、と気づいたらぜひ資料をあたって自分で直してみてください。トライ&エラーも大切ですよ」

最後は質問コーナー。参加者の皆さんから集めた「質問シート」に目を通しながら、一問一問に回答いただきました。

「どんな人にウィキペディア編集に加わってほしいですか?」という質問に、海獺さんが「それはもちろん、図書館ユーザー。本が好きな皆さんです」とはっきりと答えていたのが印象的でした。

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ウィキペディアの使いかたや編集法だけでなく、現代社会にあふれる情報との付き合いかた全般に関わる示唆に富んだお話しを聞くことができました!

海獺さん、ありがとうございました。

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第22期「本と出会う読書サロン」は、6月~2022年3月の毎月第3火曜日、午後7時から千代田図書館で開催しています。第22期の本紹介のテーマは、6月「花」7月「鳥」8月「風」9月「月」10月「海」11月「川」12月「山」1月「陸」2月「島」3月 「砂漠」です。興味のあるテーマの回だけの参加も可能ですので、気になったら見学だけでもしてみませんか?まずはメンバー登録をどうぞ。→詳細はこちらから

Posted at:16:40