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2010.06.09
ありふれた日常の中の神秘性に気づいた本 |
この「千代田人セレクション」カテゴリでは、区内の様々な分野で
活躍している“千代田人”におすすめの本を紹介していただきます。
初回となる今回は、千代田図書館コンシェルジュの押田が
★何度も読み返してしまう【バイブル本】
★人生の岐路での進路を決めた【きっかけ本】
の2冊を紹介します。(2回に分けてお届けします。)
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千代田図書館コンシェルジュ押田径子さんが
何度も読み返してしまう【バイブル本】
『影法師』より「もし」
著者 遠藤周作
出版社 新潮文庫(昭和49)
参考価格 440円
ISBN 4-10-112307-1
大学時代に出会い、年に一度は読み返しています。
恩師が一番好きな本が「もし」でした。
厳しいことで有名な先生でしたが、授業は、
専門のアメリカ文学の他、さまざまな本や先生ご自身の
体験にまつわる話がとても興味深く、朝一番の授業を
毎回楽しみにしていました。その先生が好きな本と知り、
早速読んでみました。ちょうどその頃、私自身が初めて
経験する大きな壁にぶつかっていた時でもありました。
作品の中で、「僕」によってモニックさんの人生が大きく
変わったように、自分が他人の人生を横切ることで、
相手の人生を大きく変えてしまうことがあります。
「もしあの時あの人と出会わなかったら・・」というように、
「もし」という偶然には、実は大きな意味があるのではないか
という作者の思いに強く共感しました。
さまざまな偶然の重なりの中に、今の自分が在ることに気づいた時、
自分に起きた出来事や出会った人々が
とても貴重に思えました。また、普段の何気ない生活が、
魅力的に感じるようにもなりました。
当時ぶつかっていた壁を今は乗り越えています。
壁の前でもがいていた時期に、「もし」が重なり、
さまざまな出会いがあり、
今の自分へつながる方向へ導かれたように思います。
図書館では、ほんの一瞬の挨拶や会話を繰り返しながら、
毎日たくさんの人に出会います。大げさかもしれませんが、
その一瞬が誰かにとっての「もし」につながるかもしれない
と考えると、心地よい緊張感が絶えません。
わずか16ページの物語ですが、ありふれた日常の中にある
神秘的な出会いに気づくことができるはずです。
どんな人にもどんな状況にもおすすめします。
★紹介者プロフィール★
所属 千代田図書館
担当 コンシェルジュ
名前 押田径子
図書館コンシェルジュ歴4年目。
図書館内や神保町の「本と街の
案内所」では本探しのお手伝い
や街案内の全般を行い、イベン
ト等では司会も担当する。
Posted at:10:00