『マンガはなぜ規制されるのか』

今日は、千代田図書館長の読書日記をお届けします。 

 

『マンガはなぜ規制されるのか 

        「有害」をめぐる半世紀の攻防

著者 長岡義幸

出版社 平凡社(平凡社新書)

出版年 2010年

ISBN 978-4-582-85556-2

参考価格 780円+税 


まずはこの本の紹介として、

平凡社PR誌「月刊百科」No.578 2010年12月号

掲載された出版案内より以下、転載する。

 

『「非実在青少年(*)」規制で話題となった、

東京都青少年条例の改正案。

マンガは「有害」か?

規制の仕組みとマンガバッシングの歴史と現在。

その背景を丁寧に解説する。』

 

* マンガ、アニメゲームなどに描かれた18歳未満

(実在しない青少年)の性的表現物を規制するために、

 東京都があみだした言葉。

   

 

 

マンガはマンガと言うだけで、

親や先生からイヤな顔をされた記憶がある。

しかし最近は

「誰にでも読んでもらえるように、マンガを使って表現しよう」

と言ったり、

「図書館の蔵書構成は、マンガを抜きにしては考えられない」

となってきており、

ではどんなマンガを図書館は収集していくのかを考えている。 

 

現在の図書館は、マンガは思想表現の一つの方法と捉えて、

少なくともマンガと言うだけで、資料選定の対象にはしない

という態度はとっていない。

しかし何を選ぶのかについては、現場は非常に苦労している。

 

図書館で仕事をしている私たちは、

マンガについてもう一度勉強する必要があると思っていた時、

標題の図書が発行され、飛びついた次第。

 

一読した結果グーです!!

 

著者長岡氏の結論は、 

『図書規制は判例がどうであろうと、

 表現の自由に抵触するのは間違いない。

 しかも警察的な発想で規制が行われるのは

 民主主義に反する大きな問題だ。

 それだけでなく子どもを「保護・育成」しなければならない存在

 としてみるのか、子どもを権利の主体としてみるのか

 という二つの子ども観のせめぎ合いでもある。

 表現活動を制限することによって

 一方に偏した多数派の子ども観が「蔓延」してはならない。』にある。

  

マンガは青少年に有害か、否か。

それは規制されるべきか、否か。

戦後だけでも、何回もこの議論が繰り返されてきている。

 

本書の目次によって見ると、

マンガ規制の歴史を1950年代から、つまり戦後から俯瞰している。

内容的には、悪書追放運動・「三ない運動」から説き起こし、

マンガ・劇画ブームによって規制が強まっていく過程を、

国会の動き、各政党の意見、規制推進・反対の運動団体の活動の

根拠としているものなど、丁寧に掘り起こし述べている。

 

80年代後半に「М君事件」が起こり、

「有害」コミックの取り締まりが一気に世論となり、

マンガ規制の動きが再度強まってきた。 

「おたく」という言葉が流行語になり、

存在そのものが恐れの感情を持たれたように記憶している。

そして「児童ポルノ禁止法」が成立する。

  

マンガの『性的・暴力的・残虐的描写を見ることで、

青少年の判断能力や常識、価値観が歪められるのか。

健全な育成が阻害されるのか。

そればかりか、内容に影響をうけ性犯罪や非行を

誘発するおそれさえある』と言う事なのか。

その根拠があるのか。

 

これらの回答に相当する、

最後10ぺージ余にわたる記述は圧巻であり、明快である。

最初に書いた著者長岡氏の結論に同意するか否かは別にしても、

いま世界に向け日本文化を代表して担っている感のあるマンガの、

それぞれの時代・歴史のなかで扱われてきた模様を見てみるのも面白い。 

Posted at:09:00