不安のにおい

今日は、館長の読書日記をお届けします。 

 

『精神科医がものを書くとき』

著者 中井久夫

出版社 筑摩書房(ちくま学芸文庫)2009年

定価 1,200円+税

ISBN 978-4-480-09204-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

買ってから気にしつつ、丸2年「つんどく」にしていたもの。

今度ちょうどいい機会を得て、読むことができた。

 

第Ⅰ章から第Ⅱ章は、精神医学概論と、

ご専門の統合失調症についてのもの。

第Ⅲ章に気になる文章があった。

『微視的群れ論』の中の「不安のにおい」というくだりである。

 

においは人や家などにもあり、

旅にでると街のにおいを感じることができる。

 

私がドキリとしたのは、

『においは触れることの予感でもあり、余韻でもあり、

 人間関係において、距離を定める力があります』

と書いてあるところである。

 

あるにおいに引き寄せられ、あるにおいを嫌悪するという事を、

別の言葉で表現すると、こうなるのだ!!

   

時に漠然と感じていたことを、この様に文章でピシリと書かれると

「だから中井先生スキ!!」と言ってしまいたくなる。

 

中井先生が患者と面接していた時、

患者を不安にしてしまう事を言ってしまった。

そしたら、ふいに「そのにおい」が患者の口からにおってきた。

昔、精神病院全体に匂っていたにおい

(いわゆる不潔なにおいではない)であった。

 

これを中井先生は「不安のにおい」と書いている。

 

3月末、生まれてはじめて入院するハメになった。

入院日・手術日が決まった頃、

夫から「ヘンな匂がするネ」と言われ、かなり怒っていたのだが

もしかして、それは「不安のにおい」だったのか―と思っている。

 

そして『不安になった人間が放つにおいというのは、

ひょっとしたら、

他の個体を去らせるような作用をしているのかも知れない。

だから不安になった人が孤独になっていくということは、

大いに考えられるわけです。』

 

だから、隣の精神を病んでいる人が「不安」に陥ることがないように・・・

Posted at:10:00