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2012.02.21
レポート:トークイベント「古書目(こしょもく)作りの最先端」 |
千代田図書館の企画展示「気になる古書目(こしょもく)案内」
の関連イベントとして、個性派古書店主たちのトークイベントが
2月17日(金)に開催されました。
登壇者は、神保町の〔大屋書房〕より纐纈久里(こうけつ・くり)さん、
同じく〔中野書店〕より中野智之(なかの・ともゆき)さん、そして、
女性店主・創業者として〔日月堂〕の佐藤真砂(さとう・まさご)さん、
〔古本 海ねこ〕の場生松友子(ばしょうまつ・ともこ)さんの4名。
皆さん、独自の「古書目」=古書販売目録(通信販売カタログ)
を作っておられる、古書業界・古書好きの間で話題の方々です。
どんな話が聞けるのか?と、たくさんの古書好き、本好き、
関係者らで会場が賑わう中、中野さんの進行で始まりました。
目録は通販カタログなので、東海道線の開通(明治22年)後に出現。
戦前期くらいまでが「黄金期」といえる活発な時代だったそうです。
中でも〔巌松堂書店〕の目録は、当時の日本の代表的な作品を
知るのにも役立ち、目録のシンボル的な存在として今に伝えられています。
インターネット販売などが増えていく中で、皆さんは、なぜ、
そして、どんな目録を作っているのでしょうか?
継承者と創業者というそれぞれの立場の違いも、
目録の内容や性質の違いに関わってくるようです。
▲写真右:中野智之さん
〔中野書店〕 ⇒ ホームページはコチラ
・総合目録「古本倶楽部」(毎月発行)
・商品の紹介文が掲載される「お喋りカタログ」(不定期発行)
これは、知らない人にも、知ってもらえるといいな、
おもしろいと思ってもらえると嬉しいな、との気持ちで中野さんが
書かれています。
確かに、素人にも分かりやすく、おもしろそう!と思わせてくれる
ていねいな情報が満載で、古書を通じて世界が広がりそうです。
あえて特集を組むことや、テーマ別・時代別にしていないのは、
特集を組むように古書を集めるのが、お客様の楽しみではないか?
との考えからだそうです。
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▲写真左:纐纈久里さん
〔大屋書房〕 ⇒ ホームページはコチラ
・初代、2代目までは、文字だけの目録を発行
・3代目(久里さんのお父様)は目録を発行せず。
その理由は、店頭販売に集中する、店頭ウィンドウをうまく使って
目録代わりにする、お客様ごとの目録作りは続ける、など。
・4代目(久里さん)が、目録「妖怪カタログ」を発行。
同世代の人が“和本”や江戸文化を知らないことが多く、
もっと知ってもらいたい、来店の足がかりをつくりたい、との思いが募り
自分が好きな分野で、かつ、和本の世界を知らない人でも
とっつきやすそうな「妖怪」にテーマをしぼった目録を発行。
商品が集まらない、分類が難しい、割付などの制作に難航し…
なんと完成までに10年!そして今年、新しい目録が出るという話も!?
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ご自分で古書店を創業された女性店主のお二人の場合はどうでしょうか。
目録を作るに至る経緯、内容についてお話しくださいました。
▲写真:場生松友子さん
〔古本 海ねこ〕 ⇒ ホームページはコチラ
インターネット販売以外の販路を探していたときに
「即売展」への参加をすすめられたという場生松さん。
即売展では、目録は、複数の出展者と共同で発行します。
飲み仲間の先輩方のススメもあり、
自分が本当に売りたいと思う商品だけを入れる目録、
読む目録ではなく見る目録、を作ってみたいなぁ
とは思っていたそうです。
(そして日月堂の目録のウワサは耳にしていたんだとか!)
あるとき思い立ち、20年以上携わった雑誌作りの経験を活かして
作ってみたら…おもしろい!
値段の高い本が売れたり、まとめ買いをしてもらえたりし始めたのは
目録を作ってからだそうで、
本気で作るとお客様も本気で応えてくれる、と感じているそうです。
ただ、目録作りは経費もかかるし、エネルギーもたくさんいるので、
続けていくかは模索中とのこと。
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▲写真:佐藤真砂さん
〔日月堂〕 ⇒ ホームページはコチラ
何の修行もせずに古本屋を開業し、売れない、つぶれる、やばい!
と窮地に立たされたときに「即売会」をすすめられ、五反田展に出展。
出展者と共同で目録を作り、即売会に挑むも、売上げはいまいちで…
なぜ私がこの本を選んで目録に載せているのかが伝わっていないのかも?
もうちょっと親切に書くといいのかな?
この本をみつけた!という私なりの手柄を伝えてみよう。
との思いで作ると、お客様から反応が返ってくるようになったそうです。
さらに、自店目録として作った特集目録「戦後軽装判」が好評。
続けて、紙くずを集めた特集、モダニズムの特集、と全力投球で作成。
現在は、特集目録の発行はお休み中だそうです。
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書物以外の“紙もの”を扱う店も増え、巌松堂書店の目録の時代からは
ずいぶんと変わってきているようですね。
目録作りに関してたっぷりとお話しいただいた後は
なぜ古本屋をやっているのか?という流れになりました。
こちらも、皆さんそれぞれに異なる背景をお持ちで
ここでしか聞けないような興味深い話を聞くことができました。
質疑応答の時間には、出版業界のインターネットに向かう流れと、
(今回の登壇者のような)紙の目録作りにこだわる古書店の出現
という二つの流れをどう考えているか?
古書目はこの先どうなっていくのだろうか?などの質問が出て
それに対する登壇者の皆さんの回答も興味深いものでした。
インターネットにも、紙の目録にも、それぞれに良さがありますが
お客様に喜んでもらえるのも、ネットにはない反応が見られるのも、
世界共通で名刺代わりになるのも、紙の目録なのだそうです。
――――ネットか紙か、目録を作り続けるのか辞めるのか。
今回の登壇者の皆さんも模索している様子でしたが
経費も時間も手間もかかる目録を作っていらっしゃるのは
やはり古書や紙の世界がお好きで、目録作りを楽しまれ、
その楽しさと情熱がお客様にも伝わるからなのかな、と感じました。
古書店の皆さん、濃密な時間をありがとうございました!
千代田図書館の企画展示「気になる古書目案内」は、
20日(月)に展示後期「男子が作った古書販売目録」に入替りました。
前期「女子が作った古書販売目録」をご覧いただいた方も
ぜひまた足をお運びくださいね。(詳細はコチラ)
そして、古書店や古書の即売会、各店のホームページも
ぜひぜひ覗いてみてください。
Posted at:17:00