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2016.10.14
コンシェルジュ通信Vol.18:小さな出版社について学ぶ2冊 |
最近は“出版不況”という言葉をよく目にします。
「本が売れない」「書店の数が減っている」など、
出版社にとって苦しい状況が報道される一方で、
1人~数人で本の企画、編集、営業までこなす、
小さな出版社が注目されているようです。
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9月に発売されたばかりの『小さな出版社のつくり方』は、
11社の小さな出版社にライターの永江朗さんがお話をきいた、
インタビュー集。
『小さな出版社のつくり方』
永江 朗/著
猿江商會
収録されている11社の出版社は、
テレビ局の記者さんが転身して起業した会社もあれば、
大きな出版社を退職した方が起業した会社もあり、
出版エージェントをしながら本も作っている会社や、
書店も経営しながら出版も行う会社など、
起業の経緯も営業の形態もさまざま。
前職を退職した理由や、創業資金の具体的な数字、
本の流通を握る取次会社に取引をお願いする際の苦心など、
かなり踏み込んだ内容まで赤裸々に書かれています。
経営者のみなさんの言葉がとてもユニークで、
特に羽鳥書店の羽鳥和芳さんの
「出版界ではみなさん出版不況だといいますが、
私は不況だと思っていません。
いまを出版不況だというなら、
そもそも出版好況なんて時期はあったのだろうか」
という言葉にはガツンと心を揺さぶられました。
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2冊目にご紹介する『あしたから出版社』は、
夏葉社という出版社を経営している島田潤一郎さんによる1冊。
『あしたから出版社』
島田 潤一郎/著
晶文社
「就職しないで生きるには」というシリーズの中の1冊で、
従業員が自分1人だけの小さな出版社を起業した経緯を中心に、
島田さんのこれまでの半生が綴られています。
起業のきっかけは50社の就職試験に落ちたことと
仲の良い従兄が事故で突然亡くなったこと。
「叔父と叔母のために本を作りたい」と一念発起したのは
2008年、31歳の時の出来事でした。
島田さんは出版社での仕事の経験はありましたが、
編集の経験は無し。
プルーストの『失われた時を求めて』は読破したけれど、
仕事はどれも長続きしない20代を過ごしてきたそうです。
起業してから島田さんがどんな苦労と喜びを味わったのか、
正直すぎる文章に笑いと涙がこぼれました。
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この2冊を読み進めていくうちに
図書館で本に囲まれて勤務していても、
本がどのように作られて手元に届いているのか、
出版社はどのように経営がされているのか、
知らないことばかりだったことに気付かされました。
『小さな出版社のつくり方』のあとがきを
インタビューアーの永江朗さんは
「取材した音声データを聞き返しながら、
本の未来についてあれこれ考えました。
けっこう明るい気持ちになって、
この長いあとがきを書くことができました」
という言葉で結んでいますが、
この2冊を読むと、本当に明るい気持ちになります。
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今回ご紹介した2冊は千代田図書館の「出版にまつわる本棚」
に所蔵されていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。
「出版にまつわる本棚」の資料は館内閲覧のみとなります。
ご自宅でゆっくりと読みたいという方は、
近隣書店での在庫の確認や書店への取り置きも依頼する
「書籍購入サポートサービス」をご利用いただけますので、
図書館コンシェルジュまでお気軽にお声掛けください。
Posted at:10:30