コンシェルジュ通信Vol.22:春の東御苑で万葉集に詠まれた花を探す

風は冷たいものの、日差しに暖かさを感じられるようになりました。

千代田図書館から徒歩約15分の距離にある皇居東御苑にある梅林坂では

遅咲きの梅も咲きはじめたようです。

「万葉集」に詠まれている草花の中で、

萩の次に多いと聞き、「万葉集」に詠まれた草花を探しに

早春の東御苑へ出かけることにしました。

 

どんな春の草花が万葉集に登場するのか、

まず出かける前に調べたのは、こちらの一冊。

 

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『万葉の花100選 古歌でたどる花の履歴書』

大貫 茂 文/写真

淡交社

 

万葉集に登場する草花を春夏秋冬の季節ごとに掲載しており、

代表的な歌とともに写真付きで解説しています。

 

東御苑にある草花の場所と開花状況は

宮内庁ホームページ内の皇居東御苑花だよりで確認して

さぁ出発。

(皇居東御苑花だよりはコチラ

 

千代田図書館前の清水濠を進み、

北桔橋門(きたはねばしもん)から東御苑に入りました。

天守台跡を眺めつつ左側へ進むと梅林坂があります。

 

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梅林坂は、江戸城を築城した太田道灌(おおたどうかん)が

文明10年(1478年)に天神社をおまつりするために

数百株の梅を植えたことから梅林坂という名がついたとか。

現在では約50本の梅の木が植えられているそうですが、

訪れたこの日も、紅白の梅が暖かい日差しに照らされていました。

 

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万葉集にはの歌が119首も登場するそうです。

『万葉の花100選 古歌でたどる花の履歴書』では

梅の花を詠んだこちらの歌をとりあげていました。

 

 妹(いも)が家に 咲きたる花の 梅の花

 実にし成りなば かもかくもせむ 

                 藤原八束(やつか)

 

この歌は結婚について詠んでいる歌で、

「あなたの家に咲いた梅の花が実になったときに、

(結婚するかどうか)どのようにでも決めましょう」

という意味のようです。

梅の花が実になるのはいつごろかしら、

などと思いを馳せながら、

次の草花を探して梅林坂から本丸休憩所に向かいました。

 

本丸休憩所の近くにある緑の泉と呼ばれる場所で見つけたのはこちら。

 

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現代名でアセビという種類。

古くは「あしび」と呼ばれていた花で、白い花をつけるのだとか。

ここでは、園芸用として多く栽培されているという

赤い花のアケボノアセビを見つけました。

万葉集には10首が登場するそうです。

 

つづいて本丸休憩所から、大番所の前を通って大手休憩所を目指します。

 

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大手休憩所前ではミツマタが咲き始めたばかりでした。

枝が三つ叉(また)に分かれているのが名前の由来だそう。

まだ白っぽく見えますが、枝の先に黄色の花が開きます。

 

万葉集の中に登場する「さきくさ」という草花は、

このミツマタであるとする説が現在では有力とのこと。

登場するのがわずか2首のみというのも、

どの植物か特定するのが困難な理由のようです。

 

ここでは散策していた方々から

「あら、ミツマタが咲きはじめたわね」

という声も聞かれました。

黄色の花が満開になった頃、また訪れるのが楽しみです。

 

最後に、ミツマタのある大手休憩所からほど近い

三の丸尚蔵館前のを眺めながら、

大手門を抜けて早春の東御苑を後にしました。

 

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東御苑で見つけたアセビやミツマタが

万葉集でどんな風に詠まれているかは、

ぜひ、今回ご紹介した本でご覧ください。

万葉集にまつわる草花の本を多く刊行している著者が、

分かりやすく解説しています。

 

また、今回ご紹介した一冊の他にも、

万葉集にまつわる本は多く出版されています。

今も身近にある草花が、

昔の人にはどのように映ったのかを知ると

今見えている風景も趣が違って見えてくるかもしれません。

ぜひ、図書館の本をそのきっかけにしてみてください!

Posted at:11:00