【開催レポート】展示関連講演会「南極における気象観測の変遷」

9月7日(金曜日)、千代田図書館で開催中の展示「天気をはかる ~気象庁143年をものがたる人と技術~」の関連講演会「南極における気象観測の変遷」が開催されました。

 

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展示共催者の気象庁から講師をお招きして行うイベント関連は、7月に実施した「夏のわくわく課外授業」に続いて2回目。

(1回目の「夏のわくわく課外授業2018」の様子はこちらから)

今回は気象庁の観測部計画課南極観測事務室室長の荻原裕之さんに、南極での気象観測の意義やその変遷、これまでの成果についてお話しいただきました。

 

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荻原さんは1979年に東京管区気象台測器課に入庁、富士山測候所や八丈島測候所を経て、1987年2月から1年間、第28次南極地域観測隊で昭和基地の越冬観測に参加しました。

 

気象庁は、1957年に第1次観測隊が南極での観測を始めてから、今年11月に出航する第60次観測隊に至るまでの60年以上にわたり、昭和基地を中心とした日本の南極観測に参加しています。

南極では、気温、湿度、風向・風速などの各種気象要素を地上の百葉箱で観測する地上気象観測と、気球を取り付けたラジオゾンデ(上空の気象要素を観測する無線送信機つき気象観測器)で上空を観測する高層気象観測を行います。加えてオゾン観測日射放射観測も行っており、現在ではこれらすべての観測データを気象庁から配信しています。

 

極地での気象観測は世界各国の気象予報に活かされるほか、地球全体の気象の傾向などを知るためにも大きな役割を果たしています。

南極観測の歴史の中でも、特に1982年に第23次観測隊が南極大陸上空のオゾン全量の減少を観測したことは、その後のオゾンホール発見に大きく貢献しました。

 

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講演では、年間平均気温-10度と厳しい気候の南極で、日本国内と同じように気象観測を続けるための試行錯誤とその成果を振り返っていきます。観測開始から現在に至るまでの観測機器や観測場所などの変遷を、自身の越冬体験も交えてお話しいただきました。

 

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日々の観測に加え、食糧のチェックや必要とあらば医療行為まで、南極での生活は「とにかく休みがなかった」と振り返る荻原さん。和やかな話しぶりから、苦労とともに楽しさも伝わってきました。

 

たくさんの資料と写真に加えて、ビデオも見せていただきました!

 

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これはラジオゾンデをつけたヘリウムガス入りのゴム気球を飛ばすところ。気球は、飛ばす前に灯油に漬けることで割れにくくなるそうです。なぜ割れにくくなるのか、その原理はわかっていませんが、第3次観測隊が外国の観測隊から教えてもらったという極地ならではの技術が現在も活きています。

 

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こちらは昭和基地に吹くブリザード(猛吹雪)のようす。猛烈な風の音と、数メートル先の人影がほとんど見えない視界の悪さを実感することができました。

 

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講演の最後に、「現在では持ち帰ってこられないのですが…」と見せてくれたのは南極の石。なんと38億年前のもの!右の白っぽい石には苔も残っています。

 

極地で多岐にわたる観測をしながら日常生活を営み、冬を越す観測隊の任務の厳しさを知るとともに、限られた人しか足を踏み入れることができない南極への憧れや好奇心が刺激される講演会でした。

荻原さん、ありがとうございました!

 

千代田図書館の展示「天気をはかる ~気象庁143年をものがたる人と技術~」は10月27日(土曜日)まで開催中。気象や南極観測に関する資料はもちろん、第1次南極地域観測隊の観測野帳やこれまで気象庁の観測を支えてきた機器などの貴重な展示物もご覧いただけます!

 

展示「天気をはかる ~気象庁143年をものがたる人と技術~」

【会 期】 開催中~10月27日(土曜日)

【休館日】 9月23日(日曜日)~26日(水曜日)

※蔵書点検のため休館

【会 場】 千代田図書館9階 展示ウォール

【共 催】 気象庁

 

Posted at:15:30