キリシタン大名/町人出身のキリシタン武将

今日は千代田図書館長から読書日記が届きましたので

ご紹介します。

 

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NHKラジオ第一で毎週土曜の朝に放送されている

「ラジオあさいちばん」で、今話題の本の著者に話を聞く

コーナー「著者に聞きたい本のツボ」から1冊。

 

ゲストで呼ばれていた加賀乙彦さんに興味がわき、

まず手に取った著書がこれ。

 

『高山右近』

著者:加賀乙彦

出版社:講談社(1999年)

参考価格:¥1,900+税

ISBN:4-06-209831-8

 


歴史上の人物、高山右近については、以下の程度の人物事典的な

知識は私にはあった。 

  

「キリシタン大名」と呼ばれている。

天正15年(1585)秀吉の伴天連追放令で、忠勤か信仰かの

選択を迫られ、断固として信仰を選び除封された。

加賀前田家家臣となる。

その後、家康の禁教令によりマニラに追放される。

難儀の末到着したが、その地で64歳の生涯を終えた。  

 

キリシタン信仰を持っていることが、

迫害を受ける理由になった歴史上の人物で

「南海の美少年」天草四郎、

「歴史に翻弄された悲劇の女性」細川ガラシャなどに比べ、

この人の伝記は少ないと言われている。

  

作家加賀乙彦は、史実に添いながら縦横無尽に高山右近を動かし、

「伝記小説」を創り出した。

自身もキリスト教信者であり、精神科医でもある作家のペンで

創出された高山右近は、読む者の身に迫って、私は圧倒された。

 

①今でいえば、職場で意見の合わない同僚との

「大人の付き合い」の喜怒哀楽

 

②仏教における極楽浄土と、キリスト教における天国の

 意味の微妙な違い

 

③信者でない者がキリスト教の教義について抱く素朴な

 疑問について、登場人物をして適切に語らせている

 

 

など、この小説から示唆されるものは多くあった。 

図書館に勤務しているものとして心に止まった事が一つ。

 

追放されマニラに向かう船が時化にあい、積み込んでいた書物が

汚水にまみれた。

しかし、高山右近はぜひともまた読める状態にしようと決意し、

その再生作業を始めた。

作業を手伝う彼の幼い孫たちに、書物を中にして、

昔の思い出などをかたる・・・。

 

年上の者から年下の者へ経験・知識を伝えていく場面である。

 

  

キリシタンつながりで、もう1冊。

 

同時代のキリシタン武将・小西行長の場合、

結局、高山右近になれなかった人・・・と言われる事がある。

そこに逆に親近性があるともいわれる。

町人(堺)出身のキリシタン武将の生涯は

また別の信仰生活があるのだろう。

 

『鉄の首枷 小西行長伝』

著者:遠藤周作

出版社:中公文庫(1979年)

≪絶版≫

※中公文庫ワイド版で2005年に出版されています。

 


※文庫本カバーより・・・ 

戦国の過酷な権力者太閤秀吉の下で、世俗的栄達の野望と

信仰に引き裂かれ、無謀な朝鮮への侵略戦争では密かな

和平工作を重ねたキリシタン武将小西行長の面従腹背の人生を

克明に描く著者会心の傑作。 

 

 

 

 

Posted at:18:55