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2010.03.25
レポート2:読み聞かせスキルアップ講座③ |
前回に続き、昔話と童話について、講義の内容をお伝えしたいと思います。
皆さんご存知のおはなし『あかずきん』は、
フランスの宮廷人ペローが、民話を文字にしたものです。
前回のグリム童話のところでも出てきましたが、
民衆の間で口語りにされてきた話を文字にした「口承文学」です。
日本国内では、たとえば『桃太郎』『浦島太郎』『ものぐさ太郎』などは
奈良時代の『風土記』に既に書かれています。
ということは、その話自体はもっと前から語られてきたということです。
文字が生まれるのはずっと後ですからね。
また、外国のあの話と、日本のこの話はなんだか似ているな、
ということがありませんか?
人類の歴史と共に、1つの物語は何百年もかけて世界をまわり、
世界中の昔語はつながっているのだそうです!
『こども世界の民話 上・下』
著者 内田莉莎子・君島久子・山内清子
出版社 実業之日本社
価格 1845円+税
ISBN 4-408-36161-5
1964年刊行「子どもに聞かせる世界の民話」
に収められた81編の中から42編を選び、
子どもが自分でも読めるように
新たに編集されたもの。※写真は上巻です。
そして「口承文学」は語る人が自己流にアレンジするので、
「類話」がたくさん生まれます。
いくつかの昔話も、元は1つのお話だったということがあるわけです。
「出版」が始まり、昔話も今でこそ本になっていますが、
元々は文字に頼らず、音声で伝えられてきたもの。
昔話の本は、それを元に「おはなし」をするためのものなので、
読み手は自分の言葉を付け加えてもよいのだそうです。
読むためではなく、おはなしをする・してもらう、ためにあるのですね。
昔話は、子どもに生きる力を与えます。
働きものや正直者の主人公は、たとえ困難にでくわしても、
必ず誰か、または、超自然のもの(人間ではない存在)が
見ていてくれたり、助けてくれるからです。
昔話の裏に共通するこのメッセージから、
子どもたちは現実で困難にぶつかっても
めげない強さをたくわえることができるのだそうです。
昔話の決まりごとは、
“むかし”“とんとんむかし”“むかしむかし”
英語では、
“Once upon a time”“long long time ago” などで始まること。
※最近再編された絵本では、昔話の印である
これらの言葉が省略されてしまっている本もあるそうです※
以下、参加者の皆さんが選んだ昔話を書き記しておきます。
はなさかじい/もものこたろう/やまんばのにしき/おだんごころころ
ねずみのすもう/さんまいのおふだ/くわずにょうぼう/さんびきのくま
パンのかけらとちいさなあくま/あかずきん/したきりすずめ/かにのかけっこ
なお「出版」が始まって以降、小川未明や宮澤賢治などが創作した
「児童文学」に関しては、作者が生みだした言葉で綴られているのですから、
子どもにおはなしするときに、昔話を語るときのように言葉を変えて読んだり、
自己流にアレンジしたりはしないようにしましょう。
昔話でも童話でも、本を選ぶときに大切なことは、
その1冊を通して何を伝えたいのか?ということです。
『子どもに昔話を!』
編者 石井正己
出版社 三弥井書店(2007)
価格 1700円+税
ISBN 978-4-8382-3153-9
『昔話と語りの現在』
著者 櫻井美紀
出版社 久山社
価格 1553円+税
ISBN 4-906563-80-5
日本児童文化史叢書20
Posted at:11:05