レポート2:読み聞かせスキルアップ講座③

前回に続き、昔話と童話について、講義の内容をお伝えしたいと思います。

 

皆さんご存知のおはなし『あかずきん』は、

フランスの宮廷人ペローが、民話を文字にしたものです。

前回のグリム童話のところでも出てきましたが、

民衆の間で口語りにされてきた話を文字にした「口承文学」です。

 

日本国内では、たとえば『桃太郎』『浦島太郎』『ものぐさ太郎』などは

奈良時代の『風土記』に既に書かれています。

ということは、その話自体はもっと前から語られてきたということです。

文字が生まれるのはずっと後ですからね。

 

また、外国のあの話と、日本のこの話はなんだか似ているな、

ということがありませんか?

人類の歴史と共に、1つの物語は何百年もかけて世界をまわり、

世界中の昔語はつながっているのだそうです!

 

 

『こども世界の民話 上・下』

著者 内田莉莎子・君島久子・山内清子

出版社 実業之日本社

価格 1845円+税

ISBN 4-408-36161-5

1964年刊行「子どもに聞かせる世界の民話」

に収められた81編の中から42編を選び、

子どもが自分でも読めるように

新たに編集されたもの。※写真は上巻です。


 

そして「口承文学」は語る人が自己流にアレンジするので、

「類話」がたくさん生まれます。

いくつかの昔話も、元は1つのお話だったということがあるわけです。

 

「出版」が始まり、昔話も今でこそ本になっていますが、

元々は文字に頼らず、音声で伝えられてきたもの。

昔話の本は、それを元に「おはなし」をするためのものなので、

読み手は自分の言葉を付け加えてもよいのだそうです。

読むためではなく、おはなしをする・してもらう、ためにあるのですね。

 

昔話は、子どもに生きる力を与えます。

働きものや正直者の主人公は、たとえ困難にでくわしても、

必ず誰か、または、超自然のもの(人間ではない存在)が

見ていてくれたり、助けてくれるからです。

昔話の裏に共通するこのメッセージから、

子どもたちは現実で困難にぶつかっても

めげない強さをたくわえることができるのだそうです。

 

昔話の決まりごとは、

“むかし”“とんとんむかし”“むかしむかし” 

英語では、

“Once upon a time”“long long time ago” などで始まること。

※最近再編された絵本では、昔話の印である

 これらの言葉が省略されてしまっている本もあるそうです※

 

 

以下、参加者の皆さんが選んだ昔話を書き記しておきます。

 

はなさかじい/もものこたろう/やまんばのにしき/おだんごころころ

ねずみのすもう/さんまいのおふだ/くわずにょうぼう/さんびきのくま

パンのかけらとちいさなあくま/あかずきん/したきりすずめ/かにのかけっこ

 

なお「出版」が始まって以降、小川未明や宮澤賢治などが創作した

「児童文学」に関しては、作者が生みだした言葉で綴られているのですから、

子どもにおはなしするときに、昔話を語るときのように言葉を変えて読んだり、

自己流にアレンジしたりはしないようにしましょう。

 

昔話でも童話でも、本を選ぶときに大切なことは、

その1冊を通して何を伝えたいのか?ということです。

  

『子どもに昔話を!』

編者 石井正己

出版社 三弥井書店(2007)

価格 1700円+税

ISBN 978-4-8382-3153-9

 


 

 

『昔話と語りの現在』

著者 櫻井美紀

出版社 久山社

価格 1553円+税

ISBN 4-906563-80-5

日本児童文化史叢書20


 

Posted at:11:05