レポート:読み聞かせスキルアップ講座③

ストーリーテラー櫻井美紀さんを講師に招いての

「読み聞かせスキルアップ講座」も第3回目を迎えました。

今回は皆さんに昔話の絵本、または、小学校高学年向けの絵本を

持ってきてもらい、昔話と童話の違い、その歴史について学びました。

 

 

1.グリム童話

1812年、ドイツのグリム兄弟による『子どもと家庭のためのメルヒェン集』

が出版されました。皆さんもご存知の『グリム童話集』です。

これは、グリム兄弟がドイツで語り継がれてきた昔話の採集をし、

再話をして出版された(文字になった)ものです。

昔話や民話など、民衆の間で口語り(口頭伝承)されたものを文字にした

=口承文学、つまりドイツ語で「メルヒェン」です。

これを日本語に訳すときに、子どものための読み物だから「童話」にしよう。

と、ここで「童話」という言葉が生まれたのでした。

 

―ちなみに、日本で初めて『グリム童話集』の全訳が収められたのは、

大正13年~昭和2年にかけて刊行された『世界童話大系』(監修 松村武雄)。

訳者は金田鬼一で、岩波文庫から『完訳 グリム童話集』として

1925年(大正14年)に初版が出ています。

 

2.巌谷小波の童話運動 ※千代田区ゆかりの文学者です。

巌谷小波は、1870年(明治3年)東京麹町生まれ。

医者の息子で、7歳の頃からドイツ語を学び、

15歳の頃には原語でグリムを読んでいたのだとか!

(長兄は日本人で初めてドイツに医学を学びに行った人だそうです。)

21歳で博文館の編集長になり、子どものための雑誌のはしりである

『少年世界』を手掛けたことでも有名です。

 

1896年(明治29年)、小波は京都の小学校に呼ばれます。

『桃太郎』などの日本の民話だけでなく、世界の民話や昔話をたくさん

文字にしていたので、それを語ってほしいと校長に頼まれてのことでした。

子どもの頃、親に連れていってもらった講談などが大好きだった小波は、

そこで小学生向けに世界の民話・昔話を講談口調で語ったところ、

それが子どもたちに大好評。世界の昔話を語る活動を始めたのが

=口演童話運動の始まりです。

 

小波の死後も口演童話系統の活動は続きますが、

戦時中に戦争協力の活動をした、ということで

戦争の苦い記憶とともに消し去られる傾向にあるそうです。

 

日本におけるストーリーテリング(本に書かれたものを口語りにすること)

は戦後、石井桃子らの活動によって広まったとされていますが、

形式は異なるにせよ、実は戦前から行われていたのですね。

 

★世田谷文学館で、石井桃子展が開催中です。

 没後初の回顧展。作品だけではなく、手書きの翻訳ノート、

 原著者への質問の手紙、使っていた辞書類など、その徹底的な

 仕事ぶりがわかる貴重な資料もたくさん展示されています。

 4/11(日)までなので、お見逃しなく!

 

長くなりましたので、続きは次回にしましょう。

それではまた!

 

『語り 豊饒の世界へ』

著者 片岡輝、櫻井美紀

出版社 萌文社

価格 2381円+税

ISBN 4-938631-77-6

 


 

Posted at:16:35