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2010.04.22
凪を求めて南木佳士を読む |
今日は千代田図書館長の読書日記をお届けします。
『からだのままに』
著者 南木佳士(なぎけいし)
出版社 文春文庫(2010年)
価格 495円+税
ISBN 978-4-16-754516-1
この作家の作品は、半分ほどは読んでいる。
同年輩の友達に自慢げに言ったら、
「凪(南木)シンドローム?」と返された。
凪か・・・ ウマイ!
私はこの作家の作品に、凪(なに)を求めているのか。
呼吸器外科医を長年務め、
毎日苦しみぬいて死をむかえる患者を看取っているうち、
自身はパニック障害に陥り、それからうつ病を患い、
病院勤務もままならない日日が続き、
登山をすることで病気回復の「道」を見つけつつある。
『ダイヤモンドダスト』で第100回芥川賞受賞。
いわゆる本業を手控えたり辞めたりせず、
今も二足の草鞋をはいて、
苦しみながら書くことも辞めていない。
この作家の作品は、読むことが気持ちの負担にならない。
辛い事を「辛い」と書いているのに、
読んでいる私の気持ちが辛くならない。
こんな物語が、時として無性に読みたくなることがある。
これは私が「凪」を求めているのかも知れない。
どの作品にも、自身の家族(特に父親、祖母)について、
東北で過ごした医大生の生活模様、自身のパニック障害
発症からうつ病を患うようになるまで、が必ず出てくる。
上記の事項をいくつか組み合わせて物語が仕立てあげられ、
1冊の本が出来上がっているように思う。
新刊書を読んでいても、そろそろ「あの」事が出てくるな
と思うと、必ず出てくる・・・この嬉しさ!!
しかし読むたびに何となく飽きてきて、
もう読むものかと思っても、新作が出ると手にとってしまう、
まさに「南木シンドローム」に陥ってしまっている。
最新刊『からだのままに』の登山のくだりを読んでの大発見。
南木式「なぜ山に登るのか」
「・・・略・・・からだの重心を左右に移動させつつ、
いくらか前傾して進む。ゆっくり、ゆっくり。
すると、登っているという意識が消え、自分がただそういう
行為だけが可能な動物に変容してゆく錯覚にとらわれる。」
だから結果として、山に登っていることになる・・・ということ。
私も少し山登りをするので、このフレーズをもじって
「そこに山があるから」に変え、
「からだの重心を左右に移動させることで、
登っているという意識なく、山に登っているにすぎない」と。
Posted at:17:20