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2010.06.29
この本の魅力を追求したい! |
今日は千代田区内の様々な分野で活躍している“千代田人”が
おすすめの本を紹介する【千代田人セレクション】をお届けします。
前回に引き続き、千代田図書館コンシェルジュの押田径子さんに
おすすめの本を聞きました。
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千代田図書館コンシェルジュの押田径子さんが、
進路を決めるきっかけになった【きっかけ本】
『ライ麦畑でつかまえて』
著者 J.D.サリンジャー
訳者 野崎孝
出版社 白水Uブックス
定価 830円
ISBN 4-560-07051-2
進路を決めるきっかけになった本です。
短大時代、ヘミングウェイやサロイヤンなどの短編小説を学びました。
物語の背景にその時代の出来事が影響を与えていることを知った時、
小説の面白さと奥深さを感じました。
身を隠すように生活する「謎めいた作家」サリンジャーに魅かれ、
この作品に出会いました。主人公ホールデンが愛おしく、
作品の魅力を追求したいと思い、短大から大学への編入を志しました。
“the catcher in the rye”になりたいという夢を抱く
ホールデンは、インチキな大人の世界を拒否し、
無垢な子供の世界に留まることを望みます。
それを「甘え」と言う人もいるかもしれません。
インチキへの反抗は、無垢への固執が原因と思いますが、
子供が持つ純粋なものを守るための手段であり、
それは、自分の存在を確実に認められるものを見つけるために
苦悩する若者の姿であると私は感じました。
大学へ編入後、私は「万人に共通するホールデン的経験」と
テーマを定め、卒業論文を書きました。
本が出版された1951年、この50年代アメリカの時代背景や、
16歳という多感な青年期の心の動きを知るため、
それらに関する本を読みながら理解を深めました。
物語にまつわるさまざまなものへ興味が広がり、
新しい世界を知るきっかけにもなりました。
ホールデンの最愛の妹フィービーが、雨の中、回転木馬に
乗る姿を、優しく見守る彼の姿が印象的です。
卒業旅行でニューヨークへ行き、ホールデンが歩いた
セントラル・パークやアメリカ自然史博物館を訪れた際は、
好きな人に会いにいったような気分になりました。
青春時代を懐かしみながら、また、ニューヨーカー気分を
味わいたい時に読んでみるのもおすすめです。
★紹介者プロフィール★
所属 千代田図書館
担当 コンシェルジュ
名前 押田径子
図書館コンシェルジュ歴4年目。
図書館内や神保町の「本と街の案内所」
では、本探しのお手伝いや街案内の全般
を行い、イベント等では司会も担当する。
Posted at:18:30