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2010.11.11
レポート:古書店の出張セミナー「和本入門」 |
「としょかんのこしょてんvol.41:和本入門」の
展示解説が10/31(日)に開催されました。
※図書館での展示は終了しましたが、展示品は今週11/12、13に
東京古書会館で開催される「古典籍展観大入札会」で
ご覧になれます(入場無料)。詳細はコチラ。
お宝級の和本を間近に見られる、年に1度の希少な機会です!
★古書店の出張セミナー「和本入門」
講師:橋口侯之介さん(誠心堂書店代表取締役)
連携・協力:神田古書店連盟
▲右が橋口侯之介さん、左は司会の小林光寿さん(小林書房)
有史以来、明治期に洋装本が登場するまでの千数百年の間に
出された本は、すべて「和本」ということですから、和本について
知ることは、日本の出版の歴史を知ることにもなります。
大変興味深い内容のセミナーでしたので、台風の影響により
参加者が少なかったことが本当に残念!
セミナーでのお話しをいくつかご紹介したいと思います。
―なぜ、千年以上も前の本が、今でも市場に出てくるのでしょうか。
◆千年以上もつ紙
今でいう「和紙」は平安時代に開発されたもの。
まさに悠久の時を経て・・・ロマンを感じますね。
◆日本人の書物感
日本は世界的に見ても、古い書物がよく残る国だそうです。
「後世に伝えるために」本を大事にする意識が強かったのですね。
平安時代から中世まで、その役割を担ったのは寺院。
また、冷泉家など一部の公家達が頑張って残してくれたので
室町や鎌倉時代の本などを、現代でも見ることができるのです。
▲『和漢朗詠集』烏丸光広筆 宗達模様料紙
昔はコピー機などもちろんなく、寺院のお坊さんなどが「書写」して残します。
ただ読めれば良いということではなく、本のつくり、書き方、紙の選び方などに
工夫をして、平安時代の《雅》を書物全体の雰囲気として残そうとしています。
―和本(日本の出版)の歴史
橋口さんの著書『和本入門』『続 和本入門』を読むのが
一番!ですが、お話しいただいた内容を元に端的にご紹介を。
◆~中世
仏教書、漢籍など、お硬い内容の本がほとんど。木版。
▲『後七日記』寿永2年(1183)於金剛峰寺書写
綴じ方や紙もじっくり見てみましょう。
~朝鮮は印刷先進国!李朝より活字印刷技術が入ってくる~
◆近世(江戸初期)~
李朝では銅活字だったが日本では木活字で、ひらがな本
の印刷も始まる。当時のひらがな文は、例えば「なり」の「な」
と「り」を続けて書くなどしていたので、かな50音+何百種類
という大量の活字が必要!とても大変だったでしょうね・・
▲『剣の巻』 古活字版 江戸前期刊
~やはり木活字では生産性が低く、木版に戻る~
木版に用いられたのは非常に丈夫な山桜の木。
生産性が上がり、読者層が広がるとともに、古典などの硬い本だけでは
なく、気軽に楽しめる本が読みたい!という要望が出てくる。
書き下ろしの仮名文学「仮名草子」が商業ベースに乗るようになる。
▲『尤之双紙[もっとものそうし]』 斎藤徳元著 慶安二年(1649)刊
「枕草子」の一種のパロディ。<枕>の木偏をとり「ごもっとも」
とかけた。パロディと滑稽は近世文学の特徴です。
◆17世紀末~18世紀前半
井原西鶴の登場で、仮名草子が一段と進化。
テーマや人物描写も当代風になっていく。⇒浮世草子
▲『鎌倉比事』 月尋堂・著 宝永5年(1708)刊行
鎌倉時代をテーマに扱いながら、当代を批判したりしている内容。
これには尾張藩の蔵書印が押されていて、由緒正しい本だということが
わかる。蔵書印は、古書店が仕入れ等で重要視するポイントの一つ。
◆18世紀半頃(江戸時代中期)~
江戸の庶民向け出版が盛んに。子供向けの題材、絵を中心にして
人物のせりふを文字にしてみせる、現代のコミックの走りのような
本が出始める。
・「赤本」小学生相当向け。
正月頃に出版してお年玉代わりに贈られていた。
・1740年代 「黒本」小学校高学年~中学生相当向け。
・1770年代 「黄表紙」中卒相当~若い大人向け。
▲『花重窟内裏』 黒本 琴鶴・作 奥村政房・画 延享頃(1744~48)刊行
「黒本」は、子供がお年玉で買えるよう、とにかく安くするために、
すき返しの紙(リサイクル紙)=浅草紙(※)を使用。
表紙にも厚紙ではなく、同じ紙が使用されています。
※浅草紙…浅草~足立区に製紙場が集まっていました。
印字された紙を何度もすいてリサイクルするので、紙が少し黒っぽい。
江戸の書物文化は、階層の上下、男女を問わずよく普及しました。
そのため、実用的な本も多く、実にいろんな本が作られたようです。
▲『蘭学楷梯三種』 大槻玄沢 天明8年(1788)刊
初版・二版・三版と残っていて、人気の高さがわかります。
和本の世界は広く、深く、身近でとても面白い!
そんな橋口さんのお気持ちが伝わってくるようなセミナーでした。
もっと和本について知りたい・見てみたい!という方は、
ぜひ橋口さんの著書やDVD『和本』をご覧ください。
そして今週12(金)13(土)に全国各地から集まる超・貴重な和本の
数々を間近に見ることができる「古典籍展観大入札会」をお見逃しなく!
『千年生きる書物の世界 和本入門』 橋口侯之介・著 平凡社
『続 和本入門 江戸の本屋と本づくり』 橋口侯之介・著 平凡社
[住所]神保町2-24 [営業時間]10:00~18:30/日祝休
※映画「珈琲時光」のロケ地にも選ばれた、
千代田区の「景観まちづくり重要物件」でもあります。
Posted at:15:00