カテゴリー
アーカイブ
最近の記事
2010.11.18
館長のブックトーク「野口英世」より |
10/23~11/9の読書週間中、平日の昼休みに開催した
「大人のためのランチタイムおはなし会」。
最終日は、館長によるブックトークで、6冊の本が紹介されました。
▲このイベントを楽しみに、毎回来てくださった方も。
ブックトークとは、あるテーマに沿って複数の本を紹介する
もので、1冊の本を起点に読書の世界が広がっていく面白さ、
読書の醍醐味を知っていただくためのものでもあります。
今回の「野口英世」をテーマにしたブックトークでは、
どんな本が紹介されたのでしょうか?
《起点となる1冊》
『生物と無生物のあいだ』
福岡伸一・著 講談社現代新書
福岡さんが米国ロックフェラー研究所に在席していた頃、同図書館内で
【Hideyo Noguchi】のブロンズの胸像を見つけたこと、同研究所での
野口英世の評価が、日本国内のそれとは異なっていたこと、などが
書かれていて・・・という話から、ブックトークが始まりました。
《小説で知る野口英世》
『遠き落日 上・下』 渡辺淳一・著 角川文庫
貧しい環境で生まれ育った野口英世が、医学の道を進むため、
また、単身アメリカへの出発に向けて、どのように資金を集め、
いかに成り上がっていったのか。若き無名時代の苦悩の日々
から死にいたるまでがよく描かれている。
表紙画に女優の三田佳子と牧瀬里穂の写真が載っていますが
この作品は、同名タイトルで映画化もされている。
《野口英世も一時勤めた研究所の雷おやじ》
『ドンネルの男 北里柴三郎 上・下』
山崎光夫・著 東洋経済新報社
医学者・細菌学者で、「北里研究所」設立者の北里柴三郎の伝記。
野口英世は、北里の伝染病研究所に勤めた後で、ロックフェラー研究所
に移った。 この伝記には、野口英世のほか、北里を取り巻く
さまざまな人物が登場する。当時、陸軍軍医総監・陸軍省医務局長
だった森林太郎(のちの森鷗外)と、「脚気」の原因をめぐっての確執、
さらには森をはじめ東大派との派閥抗争など・・・も描かれている。
当時「脚気」は海軍・陸軍軍人の病死の最大の原因だった。
《「脚気」の予防法を確立した人》
『白い航路 上・下』 吉村昭・著 講談社文庫
その「脚気」の予防法を確立した、高木兼寛の生涯を描いた作品。
(高木は、東京慈恵会医科大学の創立者。)
「脚気」の原因をめぐっては、陸軍軍医部を代表する森ら東大派が
<脚気菌説>を固守し、対して北里や、海軍軍医総監の高木らは
<栄養学説>を打ち立てた。派閥闘争ともなったこの対決は、
日清・日露戦争を経て、森・高木両者の死後に結着した。
《日本の近代医学の先駆者たち》
『日本医家伝』
吉村昭・著 講談社文庫
前述の高木兼寛、日本初の人体解剖を行った山脇東洋、「解体新書」を翻訳した前野良沢など、近代医学の先駆者12人の生涯を描いた評伝。
《幕末~明治という時代》
『模倣の時代 上・下』
板倉聖宣・著 仮説社
幕末~明治を一言であらわすとしたら、「模倣」の時代だったと
言えるのではないか。
本書については、あとがきから一部抜粋する。
「「この本の書名を何と名付けるか」ということについては、ずいぶん
いろいろと考えました。最初は単純に『脚気の歴史』と考えていたの
ですが、この本の内容はそんな表題で考えられるのよりももっと多数
の人々の関心を捉えることができると思われてきたので、
もっと小説風の表題にしたくなってきたのです・・・」
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
起点となる1冊の本『生物と無生物のあいだ』から、脚気の歴史を
通して当時の社会や思想について知ることのできる『模倣の時代』
まで、「野口英世」というテーマで6冊の本が紹介されました。
ブックトークは、自分が滅多に手にとらない分野の本でも
思わず読んでみたい!と思わせられる巧妙なトークと、
1冊の本から、こんな風に読書の世界を広げていくんだ!と
本の読み方を知ることのできる点が最大の魅力です。
みなさんも今後「ブックトーク」という単語を耳にしたら、
ぜひ、メモを片手に、ご参加くださいね。
Posted at:11:10