開催レポート:からだで感じる「能」と漱石

千代田図書館で、夏休み恒例の親子向けイベント

「千代田図書館で学ぼう!夏のわくわく課外授業2011」

あっという間に3教科の授業が終了し、残すは「英語」のみとなりました。

今回は8/3(水)に開催した「国語」の授業風景をお届けします。

 

「国語」の先生は、能楽師のお二人。

下掛宝生流ワキ方能楽師の安田登さん(写真左)と、

 

森田流笛方能楽師の槻宅聡さんです。

 

まずは「能」がどんな芸能なのか、というおはなしから授業がスタート。

能は、約650年前(室町時代)から続く、とても古い芸能です。

なんでも、あの世からこの世に幽霊をよびだす芸能なんだとか。

幽霊といっても、こわーいおばけが出てくるのではなく、

この世に生きている人間の方も、幽霊の方も、

お互いにまた会えるといいな、と思っているような感じだそうです。

 

そして、能といえば能面(能のお面)。

安田先生が3つの能面を見せてくださいました。

般若のお面は角が生えていたり、恐ろしいような表情だったりと

特徴がはっきりしていて分かりやすいのですが、

あとの2つは、とてもよく似ています。

男の人?女の人? 何歳くらいだろう?

うれしい? かなしい? おこっている?

みんなで、こわごわ、でもじっくりと鑑賞をしました。

「歯がくろい!」「よく見ると、目が二重!」など、

いろんな発見がありました。

そして安田先生がそれぞれのお面をゆっくりと上下に傾けると・・・

「顔が変わった!」「泣いてるみたい」「笑ってるのかも!」と

その表情の変化を楽しみました。

 

またこの日は笛方(=笛の奏者)の槻宅先生が

実際に使っている笛(=能管)を持ってきてくださったので

どんな音色なのかを披露してもらいました。

 

 

能管は、でできている横笛です。

「昔のイメージの音がする」「びっくりして笑っちゃった~」

という子もいました。

 

能管には、ピアノの音符や、ギターのコードのような譜面はなく、

音を文字であらわした「唱歌(しょうが)」を用います。

実際に笛を吹く前に、唱歌を何度も声に出して覚えるそうです。

こんな感じです。

「オヒヤーリトヒヤーリ ヒヤーリトロウロ・・・」

 

 

みんなで何度か一緒に声を出した後でもう一度

槻宅先生の演奏を聞くと、

本当にそんな風に聞こえて、とても不思議でした。

 

フルート奏者でも、なかなか音を出すことができないという

難しい笛です。参加者の何人かがチャレンジ。

なんと、すぐに音を出せるようになった子がいて、先生もびっくり!

 

 

続いて『海人(あま)』という作品についての紹介があり、

ほんの一部、どんな謡(うたい)かを見せてくださいました。

安田先生の表情と声色が、先ほどまでとは

うって変わり、鬼気迫る様子で、迫力満点!

みんなも自然と真剣なまなざしになりました。すごい!

 

その後、みんなで一緒に謡に挑戦。

でも、なかなか、先生のように大きな声が出ません。

そこで、もっとおなかから大きな声が出せるように、

みんなで「新聞破り」をしました。

 

 

1枚の新聞を利き手と逆の手でもち、おなかに集中して

「んーーーハッ!」と大きな声を出しながら、

利き手のパンチで新聞を破るというもの。

集中力・瞬発力・息の吐き方が問われます。

するりと新聞にかわされることなく、見事に新聞を破ることが

できたらOK。案外、難しいんですよ。

この「新聞破り」をやることで、やっと声が出るようになりました。

 

そのほか、五句と七句で好きなことばを出し合い、

それをくじ引きのようにして組み合わせたものを

安田先生がをつけて「謡」にする、という

おもしろい取り組みもありました。

「りゅうのすみか(七句) ほほえんで(五句)」

「たくさんおよぐ(七句) すいかわり(五句)」などと

安田先生が能の「謡」風に謡うので、耳慣れない「節」も

それぞれの組み合わせも可笑しくて、

みんな笑いがとまりませんでした。

 

残念ながら授業時間の関係で、夏目漱石と能の話にまでは

たどり着くことができませんでしたが、

能を学ぶことで、漱石作品をもっと深く味わい、楽しむことが

できますよ、というお話でした。

『吾輩は猫である』を書いた頃から、漱石は謡を習っていたそうです。

 

みんな、能に興味をもってくれたかな?

能についてまったく知らなかった子にも、能のおもしろさを

体感していただけたのではないかと思います。

授業後には「声を出して気持ちよかった!」「おもしろかった」

「笛がふけてよかった」「お面を近くで見てこわかった」など

という声をいただきました。

参加者のみなさん、お2人の先生、どうもありがとうございました。

Posted at:09:00