「夏目漱石の美術世界展」

今回は、上野公園の東京藝術大学大学美術館で開催中の

展覧会「夏目漱石の美術世界展」をご紹介します!

 

言わずと知れた近代日本の文豪・夏目漱石は、美術に造詣が深く

小説の中で古今東西の絵画作品を登場させています。

この展覧会では、漱石の文学作品や美術批評で言及された作品を集め

美術好きの文豪が、どのように美術を見ていたか

解き明かそうと試みています。

 

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(美術館より特別な許可を得て写真撮影をしています。)

 

見どころの一つは、ロンドン留学中に鑑賞し

後の執筆に大きな影響を与えたとされる絵画の数々です。

 

「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙っていた。

『坊っちゃん』より)

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「金枝」J.M.W.ターナー 1834年 テイト、ロンドン

 © Tate, London 2013

 

他にも、『三四郎』で描写された「人魚」「少女の頭部像」や

『夢十夜』の最後の夢の場面を想起させる「ガダラの豚の奇跡」など

漱石が作品を鑑賞し、どのように自身の小説の世界に取り入れていったか

小説の一節と絵を見比べることのできる、今までにない機会といえます。

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「人魚」J.W.ウォーターハウス 1900年 王立芸術院、ロンドン

 © Royal Academy of Arts, London; Photographer: John Hammond

 

もちろん西洋美術だけではなく、『草枕』『門』『それから』

などの代表作で言及された日本の古美術や

青木繁をはじめとした漱石と同時代作家の作品も

豊富に展示されています。

 

また、もう一つの見どころとして

漱石の小説に登場する架空の絵、つまり“作中画”を

小説の描写から推定し、制作した二点の作品があります。

 

『三四郎』の原口画伯が描いた「森の女」

『虞美人草』で藤尾の死の床に置かれた、酒井抱一作とされた屏風「虞美人草」です。

もう読んだことのある方は、この絵を見て自分のイメージと照らし合わせてみたり

まだの方はこの作品を念頭に読書をしてみたりと

さまざまな楽しみ方ができそうです!

 

さらに、こだわりぬいた装丁漱石自筆の南画山水図の数々まで、

文豪の愛した美術の世界をくまなく楽しむことのできる展覧会です。

ぜひ、お出かけください。

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↑漱石自筆(!)の書画

 

「夏目漱石の美術世界展」

【会 場】 東京藝術大学大学美術館

      (台東区上野公園12-8)

【時 間】 10時~17時(入館は16時半まで)

【期 間】 開催中~7月7日(日)

      ※月曜日休館

【入場料】 一般1,500円 高校・大学生1,000円 中学生以下無料

 詳しくは→コチラ

 この展覧会は、7月13日から8月25日まで静岡県立美術館へ巡回します。

 

 

Posted at:09:00