千代田図書館長の読書日記

今回は、「千代田図書館長の読書日記」をお届けします。

2012年12月に就任した望月館長に

お気に入りの本について語っていただきました。

千代田区立図書館に所蔵の本ばかりですので

ぜひ、ご一読ください。

 

私の数少ない趣味の一つに「仏像めぐり」があります。

中でも「観世音菩薩さま」―聖観音さま、十一面観音さま、千手観音さま、

如意輪観音さま、不空羂索観音さまなどなど…大の観音さま好きです。

 

観音さまは衆生済度のため修行中の身で、まだ仏の境地に達していない

いわば人間と仏さまの中間にいる存在です。

そして、女体でありながら精神はあくまでも男であって、

その両面を兼ねている…だから力強いのに美しくて色っぽいのです。

と、私は勝手に決めているのですが

このあたりが私が観音さま好きになったポイントでしょうか。

 

ところが、私には仏教心など全くありませんし、芽生えてもこない…

これは冒瀆ではないかなどと、もやもやしていたときに出会ったのが、

千代田区ゆかりの作家のひとり、白洲正子さんの

『私の古寺巡礼』『十一面観音巡礼』でした。

 

『私の古寺巡礼』

白洲 正子/著 

法蔵館

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『十一面観音巡礼』

白洲 正子/著 

新潮社

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“私は初めから「お寺を訪ねる心」なんて上等なものは

持ち合わせていなかったように思います”

というはしがきを読んで、心がすっと軽くなったのです。それに

“やはりほんとうに美しい仏さまは、ただ美しいというだけで、

しぜんに拝みたくなりました”

そう、そうなんです、私も全く同じでした。このままでいいんですね。

それからは、とにかく手さぐりでも、なるべく多くの観音さまにお会いしよう、

そう心に決めて、今も月に一度は各地をめぐっています。

 

とはいっても、白洲さんの日本文化への精通、造詣という点では

群を抜くものがあるわけで、その知識の豊富さは驚嘆に値しますが

でもその文章は清新で、インテリぶりをひけらかすようなところは全くなく、

だから心の奥にすっと入ってくる…。

 

白洲さんの背中を追う、私の「観音めぐり」はまだまだつづきそうです。

 

〈付録〉もう1冊、最近お世話になったガイドブックです。秘仏の開扉は

    圧倒的に18日が多いんです。理由をご存じの方、教えてください。

 

『日本の秘仏』

コロナ・ブックス編集部/編

平凡社

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◇◆望月館長のプロフィール◆◇

望月 千恵子(もちづき・ちえこ)

50年生まれ。

九段中学・日比谷高校を経て武蔵大学社会学部卒業後

出版社に勤務。編集長・役員を務めたのち

2010年より千代田図書館副館長に就任。

2012年12月より千代田図書館館長を務める。

 

文中で紹介された、白洲正子さんの著書は

千代田図書館9階、コンシェルジュブース横の

「千代田区ゆかりの文学者コーナー」に多数あります。

 

 

Posted at:09:00