コンシェルジュ通信Vol.4:四番町図書館ラウンジセミナー
「戦争体験者に聞く」レポート

終戦から70年を迎える今年、千代田区立図書館では

戦争を考えるさまざまな展示やイベントが開催されています。

千代田区立四番町図書館のエントランス脇にあるラウンジでは、

8月7日(金曜日)に「戦争体験者に聞く」と題して、

平河町二丁目町会会長の山口光弘さんを語り手、

千代田区文化財事務局の加藤紫識さんを聞き手にお招きした

セミナーが開催されました。

 

山口さんから戦争体験のお話をうかがう前に、

現在、四番町図書館のエントランスホールで開催されている

「戦時下のくらしと生活」展の展示品を加藤さんに解説していただきました。

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今回は、戦時中に千代田区で実際に使われていた道具が展示されています。

戦地におもむく兵隊さんにお守りとして渡した千人針には

「四銭(しせん=死線)を超える」という意味で

五銭玉が縫い付けてあるのがわかります。

虎の絵が描いてあるのは「虎は千里往って千里還る」

ということわざにちなんだとのこと。

千人針は女性1人につき1針ずつ縫ってもらうのですが、

「寅年の女性は自分の年の数だけ縫ってもよい」ということで、

年配の寅年の女性のところには千人針の依頼が多かったそうです。

展示を見ながら戦時下の生活に思いを巡らしたところで、

いよいよ山口さんからお話をうかがいます。

 

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山口光弘さんは昭和7(1932)年、千代田区平河町生まれ。

ひいおばあさんが明治時代に開業してからずっと、

平河町で豆腐屋さんを営んできたというご家庭で育ちました。

山口さんご自身は昭和14(1939)年に永田町小学校に入学、

戦争が激しくなった昭和19(1944)年に集団学童疎開をしました。

疎開先は山梨県の河口湖の近くの村。

富士山の映る河口湖で女子児童が洗濯をしている写真など、

当時の様子がよくわかる写真を見ながらお話をうかがいました。

お母さんに会いたくてトイレや布団のなかで泣いたこと。

主食がトウモロコシばかりでお腹が減ったこと。

「我が人生に食い物なし」と冗談を言ったら先生に叱られたそうです。

 

昭和20(1945)年の2月、6年生だった山口さんは中学校受験のため、

山梨県から千代田区へ戻りました。

そして5月24日の夜中から25日の朝にかけての空襲で、

山口さんの自宅があった平河町や麹町周辺も燃えてしまいました。

山口さんはお父さんと神田方面へ逃げたそうです。

自宅に戻ったら焼野原で、近所の人としばらくは防空壕で生活し、

その後、焼けトタンを拾ってきてバラックを建てて暮らしたそうです。

食べ物がないので国会前庭を畑にして、カボチャを作って食べたとか。

まもなく8月15日に終戦をむかえましたが、

食料は配給制が続き、戦争が終わったことを実感したのは、

GHQの宿舎が出来たのを見た時だったそうです。

 

質問コーナーでは参加者からさまざまな質問が寄せられました。

「麹町が空襲にあったとき、音は聞こえましたか?」

という質問に対する山口さんの

「落とされたのは焼夷弾だったので爆弾のような音はしませんでしたが、

 シュルシュルという音は聞こえました。」

というお話は、体験者にしかわからない実感がこもっていました。

 

夏休み中に開催されたセミナーということで、

参加者には小学生から大学生まで若い世代の方が多く、

親子で参加された方も目立ちました。

参加者のみなさんからは

「学校の授業で勉強した時には知らなかったことが聞けました」

「体験者ということで、その時の気持ちが聞けたのが良かったです」

「山口さんが小学生だった頃の体験をお話していただいたので、

 小学生の娘にもわかりやすかったと思います」

などの感想をいただきました。

 

終戦から70年が経ち、戦争体験者も高齢化がすすんで、

今回のように直接お話をおうかがいすることは、難しくなってきています。

山口さん、加藤さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

今回のセミナーが企画されたのは、

千代田区教育委員会・千代田区立四番町歴史民俗資料館(当時)が

平成21年から平成22年にかけて行った区内生活史調査がきっかけです。

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『千代田の記憶―区内生活史調査報告書―』(千代田区教育委員会)

山口さんの体験談はこちらの報告書にも掲載されていますので、

ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。

 

四番町図書館千代田図書館では現在、戦争に関する展示を開催しています。

この夏、戦争について改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

 

四番町図書館 文化財事務室連携展示

「むかしの道具展② 戦時下のくらしと生活」

【期間】8月6日(木曜日)~9月5日(土曜日)

【場所】四番町図書館=ラウンジ前ホール

千代田図書館&勉誠出版連携ミニ展示

「写真で知る東京空襲―『決定版東京空襲写真集』より千代田区を中心に―」

【期間】7月27日(月曜日)~8月31日(月曜日)

【場所】千代田図書館9階=調査研究ゾーン壁面

 

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勉誠出版『決定版東京空襲写真集』の詳細はコチラもご覧ください。

Posted at:10:50