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2016.01.13
千代田人セレクション:岩田副館長のおすすめ本 |
今回は、2015年10月に就任した千代田図書館の岩田副館長に
最近読んだ本からお気に入りの4冊について語っていただきました。
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『且座喫茶』
いしいしんじ/著
淡交社
高校時代に少しだけかじった茶道を、7年前より再開しました。
表千家に入門し、月3回のおけいこを行っています。
茶道の世界は着物姿の女性たちに占領されてしまいました。
「男もお茶を」と同年輩の男友だちに声をかけ、同志を引き込み、
アラ還コンビがトリオから四天王になり、いまでは五人男に増殖しています。
数ある社中でも、男性がこれだけ多いのは珍しいそうです。
こうした経験を経て出合ったのが、昨年10月刊行の『且座喫茶』です。
書き手は物語作家として定評のある、いしいしんじさん。
一昨年、著者のお顔は、銀座の「gggギャラリ-」で初めて目にしました。
いしいさんの文章に絵本作家の荒井良二さんが絵をつけていくというイベント。
姿かたちも物言いも、きわめてアバンギャルドに見えました。
書き出しは、そのイメージ通りです。
先生宅の門をくぐったとき、僕はアロハシャツにジーンズ、
腕にはかかえきれないくらいの茶花を、巨大な花束にして、
おみやげに、ともっていった。
おけいこをくりかえすうちに、いしいさんは「真剣」になります。
戦国武将たちにとって、茶碗にたたえられた濃茶は、
あまりに強烈すぎて補色に裏返った、
みどりの血に見えていたかもしれない。
日々、赤い血にまみれていた戦国の武将たちは、
みどりの血、光の血を欲し、「和」を求めていった。
それは、ただ安寧を、長閑さを欲するのとはちがう、
命がけの「和」だったのではないだろうか。
この本では、「真剣」の意味に思いをめぐらせた筆者が
僧侶、牧師、陶芸家、茶杓師、鋳物師、和菓子作家などの茶事や茶会に参加し、
亭主とのやり取りや茶室で感じたことを綴っています。
「帛紗さばきと、聖杯をきよめるしぐさは、ほとんど同じですよ」
薄茶の席、鐘の残響のような余韻のなか、高橋牧師はにこやかに話す。
「汝の敵を愛せよ、って、お茶席のことでしょう。
狭き門から入れっていうのは、つまりにじり口。
利休の侘茶は、キリシタンの教えと大いに重なるんです」
僕はこの席に、全身タータンチェックの服で座っている。
こんな調子で、いしいしんじの世界に誘っていきます。
「且座喫茶」は、「しゃざきっさ」と読みます。
禅語で、しばらく座ってお茶でも飲もうよ、という意味です。
『僕の場所』
隈研吾/著
大和書房
新しい国立競技場の設計を担当することになった隈研吾さんのエッセイ。
建築家を志したのは、東京オリンピックのときに丹下健三設計の体育館に接し、
打ちのめされたのがきっかけというのですから、ふしぎな巡り合わせです。
「反建築」「反個人住宅」など刺激的な仕事の源泉は、
マックス・ウェーバー、エンゲルス、吉田健一、梅棹忠夫などの読書から。
森の中にいるような柔らかい光が射し込む空間が評判を呼び、
初年度の来館者数が100万人を超えることが予想されている、
昨夏に開館した富山市立図書館「TOYAMAキラリ」も手がけました。
『神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く―』
石井光太/著
新潮社
アジアのイスラム教信者が多い国のフーゾク地帯に住みついて、
生きぬいている人々を「性」の視点から見つめた体験的ノンフィクション。
13歳の娼婦、中年になったニューハーフなどなど、
読み進むのがつらくなるほどの、想像を絶する現実に圧倒されます。
固定観念にとらわれがちな「イスラーム」が、まったく違って見えてきます。
『かないくん』
谷川俊太郎/文
松本大洋/絵
東京糸井重里事務所
人は死んだらどうなるのか。
普遍的かつ根源的なテーマに製作者たちは大まじめに取り組み、
文と絵とデザインが協調し合ったすばらしい絵本を作り上げました。
今年度、第49回造本装幀コンクールの「読書推進運動協議会賞」受賞作品です。
日比谷図書文化館で1月23日(土曜日)から始まる
特別展「ブックデザイ」の主人公「祖父江慎+コズフィッシュ」が、
ブックデザインを担当しています。
装幀には、図書館をちょっとだけ困らせるような仕掛けも隠されています。
◇◆岩田副館長のプロフィール◆◇
岩田 玄二(いわた・げんじ)
2011年、38年間の編集者生活をすごした講談社を退社。
在職中は、『週刊現代』『ホットドッグ・プレス』などの雑誌、
『日本美術全集』『ディズニーリゾート物語』などの書籍を担当。
2015年、公益社団法人読書推進運動協議会事務局長を退任。
同年10月より、千代田区立千代田図書館に勤務。
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岩田副館長、ありがとうございました!
ご紹介の4冊はどれも千代田区立図書館に所蔵しています。
この機会にぜひ、ご一読ください。
Posted at:10:30