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2011.11.04
レポート:翻訳家・金原瑞人さんの講演 |
「本と出会う 読書サロン」第3期オープニングイベントとして、
29日(土)に翻訳家・金原瑞人さんの講演会を開催しました。
*「本と出会う 読書サロン」とは、毎月異なるテーマに沿って
メンバー各自がおすすめの本や気になる本を持ち寄り、紹介し合う、
本を通じた交流の場です。11月に第3期目がスタートします。
(⇒「本と出会う 読書サロン」についての詳細はコチラ)
金原瑞人さんは、YA(ヤングアダルト)分野を中心に精力的に
翻訳活動を行い、訳書は300点を超えるという翻訳家であり、
法政大学社会学部の教授であり、児童文学研究家でもあります。
講演では、翻訳家として活躍されるに至る経緯、好きな海外作家
についてなど、金原さんご自身についてのお話だけでなく
YA分野の魅力、児童書やYA分野のもつ可能性、
子どもの読書についてのお話など、多岐にわたり、
会場の楽しげな笑い声につられて途中から参加された方もいました。
まずはサンフランシスコのチャイナタウンの話から始まりました。
―市場で、バタバタ動いている烏骨鶏を喜んで買っていく中国人の姿に驚いた。
でも日本人も、ピチピチしている魚はイキが良いといって、喜んで買っていく。
―別のある国では、羊の目玉を食べると聞いて驚いた。
でも日本人も、鯛の目玉は贅沢なコラーゲン質だと好んで食べる。
・・・などなど、現地でのびっくり仰天エピソードも
日本の風習と並べて話していただくことで
「なるほど、それと同じ感覚か~」と身近に感じることができました。
そうした異なる文化を同じ感動にして伝えるのが翻訳家の仕事
だと思っている、ということでした。
翻訳家として活躍されるにいたる経緯は、
翻訳家になりたい!と一筋に目指してこられたのではなく
幼稚園の受験から就職活動まで、すべてに“落ちまくった”結果
という意外なエピソードもお話いただきました。
先日お亡くなりになった北杜夫さんの『どくとるマンボウ』シリーズ
を読んで医者もいいなと思ったそうです。(医学部にも不合格)
⇒詳しくは金原さんのエッセイをぜひご一読ください。
『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』 牧野出版 又は ポプラ文庫
金原さんが精力的に翻訳されている「YA(ヤングアダルト)」分野とは、
児童書と一般書の中間に位置づけられる分野の呼称です。
金原さんは、翻訳・書評活動を通して日本にYAを根付かせた
第一人者ともいわれています。
大学院の研究室で、金原さんがそれらの原書に出会った頃は
中高生向けの本を出そうという出版社も、出せる出版社もなかったそうです。
それから、YAというジャンルの確立のきっかけとなる
1970年代のアメリカ図書館協会の調査の話、
福武書店(現ベネッセ)が児童部門を立ち上げ、
YA作品も出版する運びとなった話、
そして、中高生だけでなく、大人になって読むからこそ面白い
YA分野の魅力、懐の深さなどをとても分かりやすくお話しいただきました。
もしかするとYA(ヤングアダルト)という言葉が“しばり”となって、
中高生以外の方には馴染みがないかもしれませんが、
ぜひ一度手にとってみてください。
どの本を読んでいいかわからないときには下記の本をご参考に!
金原さんがおすすめするご自身の訳書もご紹介しておきます。
講演後には、紹介された本を立読みする姿が多数見られ、
また、アンケートでも「読んでみたい本がたくさん出てきた!」
という声をいただきました。
ここには書ききれませんが、その他にもおもしろエピソードが満載で
あっという間の1時間半でした。
金原さんの訳書は、来春以降にも続々と刊行予定とのことです。
ぜひご注目ください。洋書の訳本ではなく『忠臣蔵』『雨月物語』も
出るようですよ。楽しみです。
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『金原瑞人YAセレクション みじかい眠りにつく前に
Ⅰ真夜中に読みたい10の話』 金原瑞人/編 ジャイブ
『金原瑞人[監修]による12歳からの読書案内』
『同 海外作品』
『同 とれたて!ベストセレクション』 すべて、金原瑞人/監 すばる舎
『ブラッカムの爆撃機』
ロバート・ウェストール/作 宮崎駿/編 金原瑞人/訳 岩波書店
『水深五尋』
ロバート・ウェストール/作 金原瑞人・野沢佳織/訳 宮崎駿/画 岩波書店
『かかし』 ロバート・ウェストール/著 金原瑞人/訳 福武書店、徳間書店
⇒金原さんの初めての訳書。
分からないところは著者と手紙でやりとりをしていたそうです。
*上記の本(一部除く)は、千代田図書館9階の「中高生コーナー」
にあります。ぜひ一度ご覧になってみてください。
Posted at:10:00