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2013.08.19
千代田人セレクション:コンシェルジュ稲川いちおしの"怪談本" |
今回は、区内の様々な分野で活躍している“千代田人”に
おすすめの本を紹介していただく「千代田人セレクション」をお届けします。
今回の担当は、千代田図書館きっての「怪談通」コンシェルジュ・稲川。
暑さがまだまだ衰える気配のないこの季節にぴったりの
“怪談本”をおすすめしてもらいました。
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私は怪談が大好きで、毎日怪談ばかり読んでいます。
もともと母が怪談好きだったこともあり、幼い頃に布団の中で
聴かされるのは小泉八雲の『耳なし芳一』や『鳥取のふとんのはなし』でした。
やがて自分で本を読む年齢になったときに夢中になったのが、
母の書棚にあった中島河太郎と紀田順一郎によるアンソロジー『現代怪談集成』でした。
(※アンソロジー=複数の作家の作品を、ある基準で選び集めた本)
『現代怪談集成』
中島 河太郎/編
立風書房
この本は1982年に上下巻で発売され、
なぜか我が家には下巻しか無かったのですが、
1993年に合本が発売されたのを購入、今でも年に1回は読み直しています。
八雲、鏡花、綺堂に百閒などの明治の文豪の作品から、
映画「ゴジラ」の原作者として知られる香山滋など
昭和の作家の作品までが収録されていて、
個別の作品は今ではなかなか手に入らないものも多く、
珠玉の怪談セレクションと言わざるを得ない1冊だと思います。
特に新羽精之の「進化論の問題」や小松左京の「骨」はSF風味の作品ですが、
その結末がうっすらと分かりかけてきたときに背筋が寒くなること請け合いです。
怪談作品と言えば怪談実話を思い描く方も多いと思います。
毎年、夏になると書店やコンビニエンスストアで手軽に読める
怪談実話の文庫本や雑誌が多く発売されますが、
数多ある怪談実話本の中でも、『文藝怪談実話』はちょっと趣が異なります。
『文藝怪談実話』
遠藤 周作 ほか/著
筑摩書房
泉鏡花や喜多村緑郎らが実際に開催した怪談会が舞台の「田中河内介」の怪談、
佐藤春夫や稲垣足穂が住んだ道玄坂の化け物屋敷の話、
三浦朱門と遠藤周作が一緒に泊まった熱海の旅館で遭遇した幽霊の話など、
文豪が実際に体験したという実話が集められているのです。
本気で幽霊を怖がる思いがけない文豪の一面を垣間見ることもできる1冊です。
怪談実話のなかでも歴史があるのは、
江戸時代に旗本の根岸鎮衛によって書かれた『耳袋』です。
この本は根岸が同僚や知人から聞き取った
珍談・奇談が集められた随筆集なのですが、
それを小説家の京極夏彦が現代の怪談実話風の語り口にアレンジしたのが
『旧怪談(ふるいかいだん)―耳袋より』です。
『旧怪談―耳袋より』
京極 夏彦/著
メディアファクトリー
現代の文章なのでとても読みやすく、各話ごとに原文もついていますので、
語り口の変化による怖さの違いも楽しめます。
根岸鎮衛は南町奉行を務めるなど、江戸幕府の役人でしたから、
聞き集めた話の中には江戸城の周辺である千代田区が舞台のものもあります。
聞き覚えのある場所や自分が通い慣れた道が怪談に登場すると、
いくら江戸時代の話とはいえ、ぞっとしますね。
猛暑が続くこの夏はぜひ、怪談で涼をとってみてはいかがでしょうか?
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残暑の折、怪談を読んで背筋がヒヤリとするような体験もいいのでは?
紹介した本は、どれも千代田区立図書館に所蔵の本ばかりですので
ぜひ手に取ってみてください。
Posted at:09:00